周辺住民による一般廃棄物最終処分場建設差止請求につき,受忍限度を超える被害発生の蓋然性が高いとは | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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周辺住民による一般廃棄物最終処分場建設差止請求につき,受忍限度を超える被害発生の蓋然性が高いとは認められないとして,請求が棄却された事例

 

福岡高等裁判所/平成13年(ネ)第650号

平成15年10月27日

建設工事差止請求控訴事件

【判示事項】    周辺住民による一般廃棄物最終処分場建設差止請求につき,受忍限度を超える被害発生の蓋然性が高いとは認められないとして,請求が棄却された事例

【参照条文】    民法709

【掲載誌】     判例タイムズ1168号215頁

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

【解説】

 1 本件は,久留米市(Y)が建設中の一般廃棄物最終処分場(以下「本件処分場」という。)について,建設予定地周辺の住民であるXらが,Yに対しその建設の差し止めを請求した事案である。原審は,Xらの請求を棄却したので,Xらが控訴し,本件はその控訴審判決である。

 2(1)Yは,従前使用していた焼却灰やごみの埋立地の使用期限が経過し,埋立容量も限界に近づいたため,昭和60年ころから新規埋立地の建設を計画した。その後,市長が交代したことから,市民団体などが参加した協議会の提言も採り入れて,ごみ減量,リサイクル施策を進めるとともに,当初の計画を大幅に縮小して,平成11年に本件処分場の設置計画を発表し,現在建設中である。本件処分場は山間の谷間の地形を利用した一般廃棄物最終処分場(埋立地)であり,埋立予定廃棄物は不燃物及び焼却灰である。

 (2)Xらは,本件処分場に搬入される一般廃棄物には,ダイオキシン類などの有害物質が含まれており,これらの有害物質はほんの微量でも人体に悪影響をもたらすものであるところ,本件処分場内から浸出水が漏出すると,これらの有害物質が地下水に混入してXらが利用する井戸水や上水道取水口付近に流れ込み,Xらの生命・身体・健康に被害が生じ,Xらの人格権が侵害されると主張した。また,Xらは,Yにおいて,「本件処分場からは,未処理の浸出水を1滴も漏らさないこと」につき,主張・立証責任を負うと主張した。