後援会の結成並びに、その準備中における行動が選挙運動と認められた事例 名古屋高金沢支判 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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後援会の結成並びに、その準備中における行動が選挙運動と認められた事例

名古屋高金沢支判昭和37年8月16日 高等裁判所刑事裁判速報集296号 下級裁判所刑事裁判例集4巻7~8号648頁
公職選挙法違反 
【判示事項】 後援会の結成並びに、その準備中における行動が選挙運動と認められた事例 
【参照条文】 公職選挙法221 
       政治資金規正法6 

政治資金規正法
(政治団体の届出等)
第六条 政治団体は、その組織の日又は第三条第一項各号若しくは前条第一項各号の団体となつた日(同項第二号の団体にあつては次条第二項前段の規定による届出がされた日、第十九条の七第一項第二号に係る国会議員関係政治団体として新たに組織され又は新たに政治団体となつた団体にあつては第十九条の八第一項の規定による通知を受けた日)から七日以内に、郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者、同条第九項に規定する特定信書便事業者若しくは同法第三条第四号に規定する外国信書便事業者による同法第二条第二項に規定する信書便によることなく文書で、その旨、当該政治団体の目的、名称、主たる事務所の所在地及び主としてその活動を行う区域、当該政治団体の代表者、会計責任者及び会計責任者に事故があり又は会計責任者が欠けた場合にその職務を行うべき者それぞれ一人の氏名、住所、生年月日及び選任年月日、当該政治団体が政党又は政治資金団体であるときはその旨、当該政治団体が第十九条の七第一項第一号に係る国会議員関係政治団体であるときはその旨及びその代表者である公職の候補者に係る公職の種類、当該政治団体が同項第二号に係る国会議員関係政治団体であるときはその旨、同号の公職の候補者の氏名及び当該公職の候補者に係る公職の種類その他政令で定める事項を、次の各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に届け出なければならない。
一 都道府県の区域において主としてその活動を行う政治団体(政党及び政治資金団体を除く。次号において同じ。) 主たる事務所の所在地の都道府県の選挙管理委員会
二 二以上の都道府県の区域にわたり、又は主たる事務所の所在地の都道府県の区域外の地域において、主としてその活動を行う政治団体 主たる事務所の所在地の都道府県の選挙管理委員会を経て総務大臣
三 政党及び政治資金団体 主たる事務所の所在地の都道府県の選挙管理委員会を経て総務大臣
2 政治団体は、前項の規定による届出をする場合には、綱領、党則、規約その他の政令で定める文書(第七条第一項において「綱領等」という。)を提出しなければならない。
3 第一項の規定による届出をする場合には、当該届出に係る政治団体の名称は、第七条の二第一項の規定により公表された政党又は政治資金団体の名称及びこれらに類似する名称以外の名称でなければならない。
4 第一項の文書の様式は、総務省令で定める。
5 第一項及び第二項の規定は、政党以外の政治団体が第三条第二項の規定に該当することにより政党となつた場合について準用する。

公職選挙法
(買収及び利害誘導罪)
第二百二十一条 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する。
一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
二 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。
三 投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。
四 第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五 第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。
六 前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。
2 中央選挙管理会の委員若しくは中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員、参議院合同選挙区選挙管理委員会の委員若しくは職員、選挙管理委員会の委員若しくは職員、投票管理者、開票管理者、選挙長若しくは選挙分会長又は選挙事務に関係のある国若しくは地方公共団体の公務員が当該選挙に関し前項の罪を犯したときは、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。公安委員会の委員又は警察官がその関係区域内の選挙に関し同項の罪を犯したときも、また同様とする。
3 次の各号に掲げる者が第一項の罪を犯したときは、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。
一 公職の候補者
二 選挙運動を総括主宰した者
三 出納責任者(公職の候補者又は出納責任者と意思を通じて当該公職の候補者のための選挙運動に関する支出の金額のうち第百九十六条の規定により告示された額の二分の一以上に相当する額を支出した者を含む。)
四 三以内に分けられた選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の地域のうち一又は二の地域における選挙運動を主宰すべき者として第一号又は第二号に掲げる者から定められ、当該地域における選挙運動を主宰した者

「本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人の控訴趣意書、各記載のとおりであるから、これ等をここに引用する。
  各所論は要するに、原判決の事実誤認と法令適用の誤りとを主張し、その理由として、原判決は被告人両名がそれぞれ石黒忠1から、同人が原判示候補者佐伯宗義に当選を得しめる目的を以て、同候補者のための選挙運動の報酬等として供与することを知りながら、現金5、000円の供与を受けた旨、罪となるべき事実を認定判示しているが、右金員は佐伯宗義後援会の結成並びにその準備活動における労務の対価として授受されたものであって、決して選挙運動をしたことの報酬として授受されたものではない。而してそのことは、原審において取り調べた各種の証拠によって明らかである。そもそも右後援会は、政治資金規正法に基づき、所轄選挙管理委員会に届け出て設立された政治団体であって、同法により必要経費の支弁が認められ、而も右金員の支出は、同後援会会計責任者から、同委員会に報告ずみである。然るに原審が右金員を選挙運動の報酬等と認定し、これが供与を受けた行為に対し、公職選挙法の罰則を適用したのは、事実を誤認したかまたはこれ等関係法規の解釈適用を誤ったものであって、原判決は破棄を免れない、と言うのである。
(中略)
所論は被告人両名の行為が後援会の結成またはその準備行為であることを理由に、選挙運動であることを否定するのであるが、ひとしく後援会と称する政治団体の結成またはその準備行為であっても(それが更に後日選挙管理委員会に届け出られたとしても)、その目的並びに行為の実質において、前掲選挙運動の観念に該当する限りは、刑罰法上において、これを選挙運動と観取されることは、やむを得ないことであるから、所論は採用の限りでない。」