住専事件・住宅金融専門会社の融資担当者の特別背任行為につき同社から融資を受けていた会社の代表者が共同正犯とされた事例
商法違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成12年(あ)第1163号
【判決日付】 平成15年2月18日
【判示事項】 住宅金融専門会社の融資担当者の特別背任行為につき同社から融資を受けていた会社の代表者が共同正犯とされた事例
【判決要旨】 住宅金融専門会社の役員ら融資担当者が実質的に破たん状態にある不動産会社に対して多額の運転資金を継続的に実質無担保で融資した際に、上記不動産会社の代表取締役において、融資担当者らの任務違背、上記住宅金融専門会社の財産上の損害について高度の認識を有し、融資担当者らが自己の保身等を図る目的で本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ、迂回融資の手順を採ることに協力するなどして、本件融資の実現に加担したなど判示の事情の下では、上記代表取締役は、融資担当者らの任務違背に当たり、支配的な影響力を行使することや、社会通念上許されないような方法を用いるなどして積極的に働き掛けることがなかったとしても、融資担当者らの特別背任行為について共同加功をしたというべきである。
【参照条文】 商法(平成九年法一〇七号改正前)486-1
商法(平成七年法九一号改正前)60
商法(平成七年法九一号改正前)65-2
商法(平成七年法九一号改正前)247
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集57巻2号161頁
迂回融資とは
融資を受けられない人や事業者が、第三者を経由して資金を借入することです。迂回融資をした場合は、金融機関に信用を失墜させるリスクが高く、期限の利益を失うこともあります。
刑法
(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
会社法
(取締役等の特別背任罪)
第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六 支配人
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。
一 清算株式会社の清算人
二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者
三 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者
四 清算人代理
五 監督委員
六 調査委員