法人税法一三二条(同族会社等の行為又は計算の否認)の適用に当たり、原告会社が支払った役員所有の生コンクリート製造設備の適正賃料の算出方法は、課税庁が採用した、対象資産の取得価格に期待利回りを乗じ、その金額に諸経費等を加算する積算式評価法が合理的であるとされた事例
法人税更正処分取消請求事件
【事件番号】 名古屋地方裁判所判決/平成8年(行ウ)第10号
【判決日付】 平成11年5月17日
【判示事項】 (1) 重加算税と過少申告加算税との関係
(2) 重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を課する処分として、過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当であるから、加算税の変更賦課決定において過少申告加算税が増額していたとしても、重加算税の額が減少し、加算税総額が減少している場合には、その処分は全体として加算税を減額する一つの処分とみるべきであり、同変更賦課決定処分の取消を求める訴えの利益はないとされた事例
(3) 重加算税賦課決定処分について異議申立て及び審査請求をしなかった場合、同処分の取消しを求める訴えは、不服申立前置(国税通則法一一五条)の要件を欠き、不適法であるとされた事例
(4) 法人税法一三二条(同族会社等の行為又は計算の否認)の趣旨及び適用要件
(5) 法人税法一三二条(同族会社等の行為又は計算の否認)の適用に当たり、原告会社が支払った役員所有の生コンクリート製造設備の適正賃料の算出方法は、課税庁が採用した、対象資産の取得価格に期待利回りを乗じ、その金額に諸経費等を加算する積算式評価法が合理的であるとされた事例
(6) 原告会社が支払った役員所有の生コンクリート製造設備の賃貸料は、課税庁が右資産の取得価格に期待利回りを乗じ、その金額に諸経費等を加算して算出した適正賃料の額を上回り過大であるから、課税庁が過大賃料部分を法人税法一三二条(同族会社等の行為又は計算の否認)を適用して否認したことは適法であるとされた事例
(7) 原告会社が支払った役員所有の生コンクリート製造設備の賃貸料のうち、課税庁が算定した適正賃料を上回る金額は、右役員に対する経済的利益の供与であるから役員報酬であると認められるとされた事例
(8) 生コンクリートの製造販売を営む原告会社の取締役に対する報酬額の一部を法人税法三四条一項(過大な役員報酬等の損金不算入)の規定により損金不算入とした課税庁の処分は、原告会社と同業法人でその事業規模が類似する六社の代表取締役以外の一人当たり役員報酬の平均額を基礎として、類似法人の売上金額、売上総利益の金額、個人換算所得及び使用人給与最高額の平均比率を加重平均して算出した金額を上回る金額を損金不算入としていることから適法であるとされた事例
【判決要旨】 (1) 国税通則法六五条の規定による過少申告加算税と同法六八条一項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって、同一の修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、ただ、後者の重加算税は、前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて、当該納税者がその国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、右過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当である(最高裁昭和五八年一〇月二七日第一小法廷判決・民集三七巻八号一一九六ページ)。
(2)・(3) 省略
(4) 法人税法一三二条(同族会社等の行為又は計算の否認)は、同族会社が小数の株主ないし社員によって支配されているため、当該会社またはその関係者の税負担を不当に減少させるような行為や計算が行われやすいことに鑑みて、税負担の公平を維持するために認められたものであり、税負担を不当に減少させるような行為や計算とは、純経済人として不合理・不自然な行為・計算のことをいうと解すべきであり、租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合または独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引と異なっている場合に否認し得るものと解すべきである。
(5)~(8) 省略
【掲載誌】 税務訴訟資料242号602頁
法人税法
(同族会社等の行為又は計算の否認)
第百三十二条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 内国法人である同族会社
二 イからハまでのいずれにも該当する内国法人
イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。
ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。
ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。
2 前項の場合において、内国法人が同項各号に掲げる法人に該当するかどうかの判定は、同項に規定する行為又は計算の事実のあつた時の現況によるものとする。
3 第一項の規定は、同項に規定する更正又は決定をする場合において、同項各号に掲げる法人の行為又は計算につき、所得税法第百五十七条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)若しくは相続税法第六十四条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)又は地価税法(平成三年法律第六十九号)第三十二条第一項(同族会社等の行為又は計算の否認等)の規定の適用があつたときについて準用する。