海上保安官が捜査権のない犯罪についてした捜査に基づく公訴提起とその効力
横領詐欺被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/昭和38年(う)第2181号
【判決日付】 昭和39年6月19日
【判示事項】 海上保安官が捜査権のない犯罪についてした捜査に基づく公訴提起とその効力
【判決要旨】 海上保安官に捜査権のない犯罪について、海上保安官が捜査したものとしても、右捜査に基づき検察官が公訴を提起したときはその公訴提起の手続は無効であるとはいえない。
【参照条文】 海上保安庁法2
海上保安庁法14-4
海上保安庁法31
海上保安庁組織規程(昭和27年運輸省令74号)11
海上保安庁犯罪捜査規範2
刑事訴訟法191-1
刑事訴訟法247
刑事訴訟法338
検察庁法6
【掲載誌】 高等裁判所刑事判例集17巻4号400頁
高等裁判所刑事裁判速報集1199号
東京高等裁判所判決時報刑事15巻6号129頁
判例時報377号74頁
海上保安庁法
第二条 海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における船舶の航行の秩序の維持、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。
② 従来運輸大臣官房、運輸省海運総局の長官官房、海運局、船舶局及び船員局、海難審判所の理事官、灯台局、水路部並びにその他の行政機関の所掌に属する事務で前項の事務に該当するものは、海上保安庁の所掌に移るものとする。
第十四条 海上保安庁に海上保安官及び海上保安官補を置く。
② 海上保安官及び海上保安官補の階級は、政令でこれを定める。
③ 海上保安官は、上官の命を受け、第二条第一項に規定する事務を掌る。
④ 海上保安官補は、海上保安官の職務を助ける。
第三十一条 海上保安官及び海上保安官補は、海上における犯罪について、海上保安庁長官の定めるところにより、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察職員として職務を行う。
② 海上保安官及び海上保安官補は、第二十八条の二第一項に規定する場合において、同項の離島における犯罪について、海上保安庁長官が警察庁長官に協議して定めるところにより、刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行う。
刑事訴訟法
第百九十一条 検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。
② 検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。
第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。
第三百三十八条 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
一 被告人に対して裁判権を有しないとき。
二 第三百四十条の規定に違反して公訴が提起されたとき。
三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。
四 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。
検察庁法
第六条 検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。
② 検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。