飯田橋事件・共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
兇器準備集合、公務執行妨害被告事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和49年(あ)第1200号
【判決日付】 昭和52年5月6日
【判示事項】 一、共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
二、無許可集団示威運動と昭和25年東京都条例第44号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例4条の趣旨
【判決要旨】 一、角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行っていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に接近して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動による偶発的行為であるとして、兇器準備集合罪にいう共同加害目的の存在を否定した原判決は、判示の事情のもとにおいては、事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
二、昭和25年東京都条例第44号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例4条は、同条にいう所要の措置が違反行為の態様、公共の秩序に対する侵害の程度等に応じて必要な限度を超えてはならないことを規定したものであつて、無許可の集団示威運動に対し、これを直ちに実力で阻止し解散させなければならないほど明白かつ切迫した事態にない限り阻止することも許されないとする趣旨ではない。
【参照条文】 刑法208の2-1
刑事訴訟法411
刑法95-1
昭和25年東京都条例第44号4
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集31巻3号544頁
刑法
(公務執行妨害及び職務強要)
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
(凶器準備集合及び結集)
第二百八条の二 二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。
刑事訴訟法
第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。