民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴え | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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1 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えの適否

2 国に対しアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することの可否

3 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料を請求した場合につき右被害が受忍限度の範囲内にあるとした判断に違法があるとされた事例

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和62年(オ)第58号

平成5年2月25日

航空機発着差止等請求事件

【判示事項】    1 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えの適否

2 国に対しアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することの可否

3 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料を請求した場合につき右被害が受忍限度の範囲内にあるとした判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】    1 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えは不適法である。

2 国が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づきアメリカ合衆国に対し同国軍隊の使用する施設及び区域として飛行場を提供している場合において、国に対し右軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することはできない。

3 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料の支払を求めたのに対し、単に右飛行場の使用及び供用が高度の公共性を有するということから右被害が受忍限度の範囲内にあるとした原審の判断には、不法行為における侵害行為の違法性に関する法理の解釈適用を誤った違法がある。

【参照条文】    民事訴訟法2編1章

          日本国とアメリカ合衆国との間に相互協力及び安全保障条約

          民法709

          民法198

          民法199

          国家賠償法1-1

          国家賠償法2-1

          日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法

          日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法2

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集47巻2号643頁

 

日本国とアメリカ合衆国との間に相互協力及び安全保障条約

第六条

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

 

民法

(占有保持の訴え)

第百九十八条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

(占有保全の訴え)

第百九十九条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

 

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法

(国の賠償責任)

第一条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基き日本国内にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍(以下「合衆国軍隊」という。)の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例により、国がその損害を賠償する責に任ずる。

第二条 合衆国軍隊の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつたために日本国内において他人に損害を生じたときは、国の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じた場合の例により、国がその損害を賠償する責に任ずる。