頭髪黒染め事件・公立高校に在籍していた控訴人が,教員らから頭髪指導として受けた措置のうち,黒染め | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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頭髪黒染め事件・公立高校に在籍していた控訴人が,教員らから頭髪指導として受けた措置のうち,黒染め等について国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反があるとは認めず,不登校となった後の生徒名簿からの削除等について上記の違法又は義務違反に基づく損害賠償請求を一部認めた原審の判断を是認した事例

 

 

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/令和3年(ネ)第714号

【判決日付】      令和3年10月28日

【判示事項】      公立高校に在籍していた控訴人が,教員らから頭髪指導として受けた措置のうち,黒染め等について国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反があるとは認めず,不登校となった後の生徒名簿からの削除等について上記の違法又は義務違反に基づく損害賠償請求を一部認めた原審の判断を是認した事例

【参照条文】      国家賠償法1-1

             民法415

【掲載誌】        判例時報2524・2525合併号328頁

             LLI/DB 判例秘書登載

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を次のとおり変更する。

 2 被控訴人は,控訴人に対し,226万4948円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下,略語は特記しない限り原判決の例による。)

 1 事案の要旨

  (1) 本件は,被控訴人が設置,運営する大阪府立A高等学校(本件高校)に在籍していた控訴人が,本件高校の教員らから,頭髪指導として,繰り返し頭髪を黒く染めるよう強要され,授業等への出席を禁じられるなどしたことから不登校となり,さらに不登校となった後も名列表(点呼等に用いられる生徒名簿)から控訴人の氏名を削除され,教室から控訴人の机と椅子(控訴人席)を撤去されるなど不適切な措置を受けたために,著しい精神的苦痛を受けるなどの損害を受けた旨主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項又は債務不履行(在学関係上の安全配慮義務違反)に基づく損害賠償として,226万4948円及びこれに対する不法行為後又は履行期後の日である訴状送達の日の翌日である平成29年10月3日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

  (2) 原審は,控訴人に対する頭髪指導について国家賠償法1条1項にいう違法又は債務不履行があるとは認められないが,控訴人が不登校となった後の名列表からの氏名の削除及び教室からの控訴人席の撤去の措置について国家賠償法1条1項にいう違法があると認め,これにより控訴人に生じた精神的損害に対する慰謝料30万円及び弁護士費用3万円並びにこれらに対する平成29年10月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度で控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却した。

  (3) 控訴人は,原判決の敗訴部分を不服として控訴した。