電気通信事業法の令和4年改正その9 第11章 「検索情報電気通信役務」および「媒介相当電気通信役 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第11章 「検索情報電気通信役務」および「媒介相当電気通信役務」概念の新設

 

改正法では、「検索情報電気通信役務」と「媒介相当電気通信役務」という新たな概念が設けられています(改正法13条2項、16条2項、同条6項、164条1項3号ロおよびハ)。

 

これまで、第三号事業者に該当する事業者は、電気通信事業者の届出をする必要がありませんでした。しかし、本改正法施行後は、大規模なインターネット検索サービスやSNSを提供する事業者で、総務大臣に指定を受けた者は、届出などの手続きをしなければならなくなりました。

 

検索情報電気通信役務とは、入力されたキーワードに対応して、そのキーワードを含むウェブページのURLなどを出力する電気通信設備を提供する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるものを意味します。

 

 

具体的にはInstagramやTwitterなど、利用者数の多い大規模なSNSが例に挙げられます。

 

 

【指定の対象となりうるサービス】

 

検索情報電気通信役務...インターネット検索サービス

媒介相当電気通信役務...SNSなど他社の通信を媒介して行うサービス

なお、指定の対象となるのは、上記電気通信役務のうち、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして、総務省令で定めるものとされており、

 

「検索情報電気通信役務」については以下が対象となります。

 

利用者数が1,000万人以上である電気通信役務

分野横断的な検索サービスを提供する電気通信役務(レストラン、商品など特定分野のみの検索サービスは対象外)

(引用:電気通信事業法施行規則などの一部改正について​​)

 

 

「媒介相当電気通信役務」については以下が対象となります。

 

利用者数が1,000万人以上である電気通信役務

主として不特定の利用者間の交流を実質的に媒介する電気通信役務(付随的に当該電気通信役務を提供する電気通信役務及び商取引に関する情報のみ取り扱う電気通信役務は除く。)

※ テキスト、動画又は音声によるSNS、登録制掲示板、登録制オープンチャット、動画共有プラットフォーム、ブログプラットフォーム等。なお、契約や登録が不要なものは、対象外

 

(引用:電気通信事業法施行規則などの一部改正について​​)

 

 

 上述のとおり、第三号事業は、電気通信事業法の一部の規定のみが適用されるという緩やかな規制に服しているところ、現状、インターネット検索サービスやSNSは、第三号事業として扱われています。しかしながら、本改正によって、新たに「検索情報電気通信役務」7 と「媒介相当電気通信役務」8 という概念が新設され、これらの電気通信役務を提供する者として総務大臣に指定された者は、電気通信事業の届出等をしなければならないとされました(改正法13条2項、16条2項、同条6項、164条1項3号ロおよびハ)。検索情報電気通信役務は分野横断的なインターネット検索サービスを想定しており、媒介相当電気通信役務はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、動画共有プラットフォーム、ブログプラットフォーム、電子掲示板等(以下「SNS等」といいます)を想定しています。

 

 

 もっとも、インターネット検索サービスやSNS等のすべてを規制対象とすることまでは想定されておらず、一部の大規模な事業者のみが規制対象となる見込みです。「特定利用者情報の適正な取扱いに関するワーキンググループ」の資料 9 によれば、月間アクティブ利用者数の年平均値が1,000万人以上の分野横断検索サービスやSNS等を提供する事業者等が規制対象とされています。改正施行規則においても、この基準が採用されました(改正施行規則59条の3第4項および第5項)。

 

 

 改正法施行後は、このような大規模なインターネット検索サービスやSNS等を提供する事業者は、電気通信事業の届出等を行う必要があり(改正法13条2項、16条2項、同条6項)、その結果「電気通信事業者」として、特定利用者情報の規律を含む各種の規制に服することになります。

 

 

電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備と定義されており、各種の端末機器、出入力装置、交換機、搬送装置、無線通信設備、電子計算機、ケーブル、通信用電力装置およびこれらに付属する機器を含みます(多賀谷一照『電気通信事業法逐条解説(第2版改訂版)』27頁(情報通信振興会,2019))。 ↩︎

 

送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備およびこれと一体として設置される交換設備ならびにこれらの附属設備をいい、たとえば、光ファイバや携帯電話基地局等が該当します。 ↩︎

 

Mobile Network Operatorの略であり、自ら電気通信回線設備を保有して、移動系サービスを提供する事業者のこと。 ↩︎

 

Fixed Network Operatorの略であり、自ら電気通信回線設備を保有して、固定系サービスを提供する事業者のこと。 ↩︎

 

Mobile Virtual Network Operatorの略であり、電気通信回線設備を保有せずに、移動系サービスを提供する事業者のこと。 ↩︎

 

Fixed Virtual Network Operatorの略であり、電気通信回線設備を保有せずに、固定系サービスを提供する事業者のこと。 ↩︎

 

入力された検索情報(検索により求める情報をいう)に対応して当該検索情報が記録されたウェブページのドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲および利用状況を勘して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務 ↩︎

 

その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る)に情報を記録し、またはその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、または当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲および利用状況を勘して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務 ↩︎

 

総務省「電気通信事業ガバナンス検討会 特定利用者情報の適正な取扱いに関するWG取りまとめ」(2022年) ↩︎