金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、社会通念に照らして、その営利性、継続性及び独 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、社会通念に照らして、その営利性、継続性及び独立性の有無によつて判断すべきものと解するのが相当であり、具体的には、利息の収受の有無及びその多寡、貸付の口数、貸付の相手方との関係、貸付の頻度、金額の大小、担保権設定の有無、人的及び物的設備の有無、規模、貸付宣伝広告の状況等諸般の事情を総合的に勘案して、右の点を判断すべきものと考えられる。

 

 

 

更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成3年(行コ)第55号

【判決日付】      平成4年1月30日

【判示事項】      (1) 金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かの判断基準(原審判決引用)

             (2) 納税者が金銭の貸付行為を事業として行っていたとは認められないとして、課税庁による貸倒引当金の否認が適法であるとされた事例(原審判決引用)

             (3) 納税者の貸金業が創業期にあることから、貸付先が限定され、貸付条件も納税者に有利なものにできず、十分な利潤が上げられないのは当然であって、むしろ納税者の主観を重視すれば、金銭の貸付は事業として行われたものと解すべきであるとの納税者の主張が排斥された事例(原審判決引用)

             (4) 金銭貸付に係る所得を毎年事業所得として申告してきたのに対し、課税庁は一度も更正したことがないにもかかわらず、本件各年度分について突然これを事業所得に当たらないとして、更正処分を行うのは禁反言の原則に照らし許されない、との納税者の主張に対し、そのことだけでは、課税庁が納税者に対し、同人の金銭貸付が事業として行われていることを認めたことにはならないとされた事例(原審判決引用)

             (5) 納税者の利息収入が、事業所得ではなく雑所得に当たるとされた事例(原審判決引用)

【判決要旨】      (1) 金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、社会通念に照らして、その営利性、継続性及び独立性の有無によって判断すべきものと解するのが相当であり、具体的には利息の収受の有無及びその多寡、貸付の口数、貸付の相手方との関係、貸付の頻度、金額の大小、担保権設定の有無、人的及び物的設備の有無、規模、貸付の宣伝広告の状況等諸般の事情を総合的に勘案して、判断すべきものと考えられる。

             (2) 納税者の貸付の大半が、自らがいわばその経営者の立場にある会社に対する運転資金又は事業資金の融資であり、その他の貸付は友人又は知人の四名に対するものだけであること、これらの貸付の多くについて、利息を定期的に収受しておらず、事前に債権の回収確保のための十分な措置を講ずることもせず、その結果、右会社以外の貸付先四名のうち三名については貸付金の相当額を最終的に貸倒れとして処理せざるを得ないという状態になっていること、更にまた、その事務所についてもそれが、貸金業のための事業所として利用されていたとまでいえるような外形的事実が存在していなかったこと等からすれば、納税者が正規の貸金業の登録を行っていたこと等を考慮に入れても、なお納税者が右金銭の貸付行為を事業として行っていたものと評価することは困難なものというべきである。

             (3)~(5) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料188号191頁

 

所得税法

(事業所得)

第二十七条  事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

2  事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。