内申書裁判・学校教育法施行規則54条の3に基づく調査書(高校入試の際中学校長により作成提出されたいわゆる内申書)の記載が生徒の思想信条の自由や表現の自由を侵すものではないとされた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和57年(オ)第915号
【判決日付】 昭和63年7月15日
【判示事項】 学校教育法施行規則54条の3に基づく調査書(高校入試の際中学校長により作成提出されたいわゆる内申書)の記載が生徒の思想信条の自由や表現の自由を侵すものではないとされた事例
【判決要旨】 学校教育法施行規則54条の3に基づき高校入試の際中学校長により作成提出された調査書(いわゆる内申書)の備考欄及び特記事項欄におおむね「校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭紛糾を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないで、ビラを配ったり、落書きをした。」との記載が、欠席の主な理由欄に「風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため」という趣旨の記載がされた場合において、右記載は生徒の思想信条の自由や表現の自由を侵すものではない。
【参照条文】 憲法19
憲法21-1
憲法26-1
教育基本法3-1
学校教育法28-3
学校教育法40
学校教育法施行規則54の3
学校教育法施行規則59-1
【掲載誌】 判例タイムズ675号59頁
判例時報1287号65頁
憲法
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる
教育基本法
(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
学校教育法
第五十九条 高等学校に関する入学、退学、転学その他必要な事項は、文部科学大臣が、これを定める。
学校教育法施行規則
第九十条 高等学校の入学は、第七十八条の規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査(以下この条において「学力検査」という。)の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が許可する。
2 学力検査は、特別の事情のあるときは、行わないことができる。
3 調査書は、特別の事情のあるときは、入学者の選抜のための資料としないことができる。
4 連携型高等学校における入学者の選抜は、第七十五条第一項の規定により編成する教育課程に係る連携型中学校の生徒については、調査書及び学力検査の成績以外の資料により行うことができる。
5 公立の高等学校(公立大学法人の設置する高等学校を除く。)に係る学力検査は、当該高等学校を設置する都道府県又は市町村の教育委員会が行う。