筑豊じん肺訴訟・雇用者の安全配慮義務違反によりり患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
損害賠償,民訴法260条2項による仮執行の原状回復請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成13年(受)第1759号
【判決日付】 平成16年4月27日
【判示事項】 1 雇用者の安全配慮義務違反によりり患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
2 じん肺による死亡に基づく損害額の算定においてじん肺法所定の管理区分に相当する病状に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているとしても当該消滅時効に係る損害額の控除を要しない場合
【判決要旨】 1 雇用者の安全配慮義務違反によりり患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は,死亡の時から進行する。
2 じん肺による死亡に基づく損害額の算定において,じん肺法所定の管理区分に相当する病状に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているとしても,上記死亡に基づく損害を,上記病状に基づく損害とは別個のものであるとし,じん肺による死亡それ自体に係る損害として評価してその額を定める場合には,その額から上記消滅時効に係る損害額を控除しなければならないものではない。
【参照条文】 民法415
じん肺法4
民法166
民法416
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事214号119頁
裁判所時報1362号249頁
判例タイムズ1152号128頁
判例時報1860号152頁
労働判例872号13頁
民法
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
じん肺法
(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)
第四条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。
型 |
エックス線写真の像 |
第一型 |
両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第二型 |
両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第三型 |
両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第四型 |
大陰影があると認められるもの |
2 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。
じん肺管理区分 |
じん肺健康診断の結果 |
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管理一 |
じん肺の所見がないと認められるもの |
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管理二 |
エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの |
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管理三 |
イ |
エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの |
ロ |
エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの |
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管理四 |
(1) エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの |