仮登記担保権者と仮登記に遅れて目的不動産を賃借し占有する第三者に対する右不動産の換価処分前における損害賠償請求
家屋明渡事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和46年(オ)第653号
【判決日付】 昭和50年2月25日
【判示事項】 一、いわゆる仮登記担保権者と仮登記に遅れて目的不動産を賃借し占有する第三者に対する右不動産の換価処分前における損害賠償請求
二、目的不動産の換価処分前に被担保債権について弁済の提供を受けその受領を拒絶したいわゆる仮登記担保権者と仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対する明渡請求
【判決要旨】 一、いわゆる仮登記担保権者は、目的不動産の換価処分前においては、自己が右不動産を使用収益することができる旨の約定がある等特段の事情のないかぎり、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対し、賃料相当の損害金の賠償を請求することができない。
二、いわゆる仮登記担保権者が、目的不動産の換価処分前に、被担保債権について適法な弁済の提供を受けその受領を拒絶しながら、換価手続の一環として、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対しその明渡を請求することは、許されない。
【参照条文】 民法709
民法413
民法492
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集29巻2号112頁
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(受領遅滞)
第四百十三条 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
(弁済の提供の効果)
第四百九十二条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。