確定的な脱税の意思に基づき顧問税理士に株式等の売買による多額の雑所得のあることを秘匿して過少な申告を記載した確定申告を作成させたことなどにより所得税の確定申告が重加算税の賦課要件を満たすとされた事例
所得税の重加算税賦課決定処分取消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/平成6年(行ツ)第215号
【判決日付】 平成7年4月28日
【判示事項】 確定的な脱税の意思に基づき顧問税理士に株式等の売買による多額の雑所得のあることを秘匿して過少な申告を記載した確定申告を作成させたことなどにより所得税の確定申告が重加算税の賦課要件を満たすとされた事例
【判決要旨】 納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の陰匿等の積極的な行為が存在しないとしても、右各確定申告は、国税通則法六八条一項所定の重加算税の賦課要件を満たす。
【参照条文】 国税通則法68-1
税理士法1
税理士法41の3
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集49巻4号1193頁
国税通則法
(重加算税)
第六十八条1項 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
税理士法
(税理士の使命)
第一条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
(助言義務)
第四十一条の三 税理士は、税理士業務を行うに当たつて、委嘱者が不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れている事実、不正に国税若しくは地方税の還付を受けている事実又は国税若しくは地方税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正をするよう助言しなければならない。