荷渡依頼書による依頼の撤回
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和32年(オ)第448号
【判決日付】 昭和35年3月22日
【判示事項】 1、荷渡依頼書による依頼の撤回
2、特定物の売買において当然には所有権が移転しないとされた事例
【判決要旨】 1、寄託者から受寄者である倉庫業者に対し荷渡先を指定した上これに受寄物たる商品を引渡すことを依頼するいわゆる荷渡依頼書が、荷渡先の第三者に交付された後であつても、右第三者がこれを受寄者に呈示する以前寄託者において受寄者に対する通知により依頼を撤回することを妨げない。
2、倉庫に寄託中のハンカチーフ売買契約において、代金を約3日後の午後4時限り支払うべく、右支払のないときは契約は失効する旨の解除条件が付されているときは、特段の事情のない限り、右ハンカチーフの所有権は契約により当然買主に移転するものではないと解するのが相当である。
【参照条文】 商法597
民法176
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集14巻4号501頁
民法
(寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等)
第六百五十七条の二 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
2 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
3 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
(物権の設定及び移転)
第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。