みずほ銀行事件・漏えいが生じた場合に顧客等の情報主体また被控訴人兼附帯控訴人(一審被告・反訴原告 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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みずほ銀行事件・漏えいが生じた場合に顧客等の情報主体また被控訴人兼附帯控訴人(一審被告・反訴原告)Y社グループの経営および業務に対して重大な影響を及ぼすおそれがあるため厳格な管理を要するとされる「重要(MB)」に分類される情報を含む4件の情報資産を持ち出し,少なくとも15件の情報を出版社等に常習的に漏えいした控訴人兼附帯被控訴人(一審原告・反訴被告)Xの行為は,情報資産の適切な保護と利用を重要視するY社の企業秩序に対する重大な違反行為であるというべきであるとした一審判断が維持された例

 

 

              地位確認等請求本訴,建物明渡等請求反訴控訴,同附帯控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和2年(ネ)第1044号、令和2年(ネ)第2919号

【判決日付】      令和3年2月24日

【判示事項】      1 漏えいが生じた場合に顧客等の情報主体また被控訴人兼附帯控訴人(一審被告・反訴原告)Y社グループの経営および業務に対して重大な影響を及ぼすおそれがあるため厳格な管理を要するとされる「重要(MB)」に分類される情報を含む4件の情報資産を持ち出し,少なくとも15件の情報を出版社等に常習的に漏えいした控訴人兼附帯被控訴人(一審原告・反訴被告)Xの行為は,情報資産の適切な保護と利用を重要視するY社の企業秩序に対する重大な違反行為であるというべきであるとした一審判断が維持された例

             2 XとY社との間の信頼関係の破壊の程度は著しく,将来的に信頼関係の回復を期待することができる状況にもなかったといえ,Y社において,処分の量定として懲戒解雇を選択することはやむを得なかったというべきであるから,本件懲戒解雇は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められるとした一審判断が維持された例

             3 本件退職金規程5条1項は,懲戒処分を受けた者の退職金は減額または不支給とすることがある旨を規定しており,懲戒処分を受けた者に対する退職金の支給,不支給についてはY社の合理的な裁量に委ねており,懲戒処分のうち懲戒解雇の処分を受けた者については,原則として退職金を不支給とすることができると解されるとされた例

             4 懲戒解雇事由の具体的な内容や,労働者の雇用企業への貢献度合いを考慮して,退職金の全部または一部の不支給が信義誠実の原則に照らして許されないと評価される場合には,全部または一部を不支給とすることは,裁量権の濫用となり,許されないものというべきであるとされた例

             5 Xの行為は,Y社の信用を大きく毀損する行為であり,また,反復継続して情報を持ち出し,漏えい行為が実行されたことも合わせて考慮すると,悪質性の程度は高く,Xが永年Y社に勤続してその業務に通常の貢献をしてきたことを考慮しても,退職金の全部を不支給とすることが,信義誠実の原則に照らして許されないとはいえず,裁量権の濫用には当たらないというべきであるとされた例

【参照条文】      労働基準法11

             労契法15

【掲載誌】        判例時報2508号115頁

             労働判例1254号57頁

 

 

労働基準法

第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

 

労働契約法

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。