愛人およびその相続人の共有不動産が売買の目的とされた場合、当該相続人は当該売買契約における売主の義務の履行を拒みえない
所有権移転登記手続等請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和37年(オ)第810号
【判決日付】 昭和38年12月27日
【判示事項】 愛人およびその相続人の共有不動産が売買の目的とされた場合、当該相続人は当該売買契約における売主の義務の履行を拒みえない
【参照条文】 民法563
民法560
民法920
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集17巻12号1854頁
民法
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(権利移転の対抗要件に係る売主の義務)
第五百六十条 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
要 旨
売主およびその相続人の共有不動産が売買の目的とされた場合において、売主が死亡し、相続人が限定承認をしなかつたときは、買主が当該不動産の共有者を知つていたかどうかを問わず、相続人は、無限に売主である被相続人の権利義務を承任するから、右売買契約成立当時、共有者の一員として、当該不動産に持分を有していたことを理由とし、その持分について右売買契的における売主の義務の履行を拒みえないものと解するのが相当である。ところで、原審の確定したところによれば、A子は自己およびその相続人である上告人の共有に属する本件建物を被上告人に売り渡し、その後A子は死亡し、上告人は限定承認をしなかつたというのであるから、上告人は被上告人に対し本件建物全部について所有権移転登記手続をする義務の履行を拒みえないものといわねばならない。したがつて、本件建物に対する上告人の三分の二の持分についても、本件売買契約による上告人の義務は履行不能とはいえない旨の審判の判断は不当である。
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