デート商法
債務不存在確認等,参加各請求控訴事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/平成20年(ネ)第747号
【判決日付】 平成21年2月19日
【判示事項】 割賦販売斡旋業者であるA会社とクレジット契約を締結した上,B会社から宝飾品を輸入した控訴人が,A会社から個品割賦購入斡旋事業の営業譲渡を受けた被控訴人(承継参加人)に対し,A会社において加盟店に対する加盟店管理調査義務の懈怠があったとして不法行為責任に基づき,割賦金既払金相当額を不当利得返還請求権に基づき返還を求めたのに対し,原審が控訴人の請求を棄却したため控訴した事案。
控訴審は,控訴人の被控訴人に対する不当利得返還請求権に基づく既払金の返還請求は,本件売買契約の公序良俗違反による無効及びクレジット契約の失効等により認められるとして,控訴人の請求を認容した事例
【参照条文】 割賦販売法30の4-1
民法703
【掲載誌】 金融・商事判例1378号18頁
判例時報2047号122頁
金融法務事情1945号95頁
LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 金融・商事判例1336号158頁
判例時報2066号169頁
北大法学論集61巻2号692頁
別冊ジュリスト200号84頁
主 文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は,控訴人に対し,106万0850円及びこれに対する平成19年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 控訴人のその余の請求を棄却する。
4 被控訴人の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを5分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
6 この判決の主文第2項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,126万5850円及びうち106万0850円に対する平成17年9月27日から,うち20万円に対する平成19年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人の請求を棄却する。
(4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(5) (2)項につき,仮執行宣言
2 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要(略語については,原判決の表記に従う。)
1 本件は,(1)割賦販売斡旋業者であったA株式会社(以下「A」という。)とクレジット契約を締結した上で,株式会社B(以下「B」という。)から宝飾品3点を購入した控訴人が,Aから個品割賦購入あっせん事業の営業譲渡を受けた被控訴人(承継参加人)に対し,①Aにおいて加盟店に対する加盟店管理調査義務の懈怠があったとして,不法行為責任に基づき,割賦金既払金相当額及び弁護士費用の損害賠償,②クレジット契約自体が,公序良俗に反して無効であり,また消費者契約法上の取消事由があるとして,不当利得返還請求権に基づき,割賦金既払金相当額の返還及び民法所定の遅延損害金の支払を求め,(2)被控訴人が,控訴人に対し,割賦金未払金及びこれに対する商事法定利率による遅延損害金の支払を請求した事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却し,被控訴人の請求につき,控訴人の抗弁を排斥して,これを認容した。控訴人はこれを不服として控訴した。
割賦販売法
第三章 信用購入あつせん
第一節 包括信用購入あつせん
第一款 業務
(包括信用購入あつせんの取引条件に関する情報の提供等)
第三十条 包括信用購入あつせんを業とする者(以下「包括信用購入あつせん業者」という。)は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんをするためカード等を利用者に交付し又は付与するときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該包括信用購入あつせんをする場合における取引条件に関する次の事項に係る情報を当該利用者に提供しなければならない。
一 包括信用購入あつせんに係る商品若しくは権利の代金又は役務の対価(包括信用購入あつせんの手数料を含む。)の支払の期間及び回数
二 経済産業省令・内閣府令で定める方法により算定した包括信用購入あつせんの手数料の料率
三 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
2 包括信用購入あつせん業者は、第二条第三項第二号に規定する包括信用購入あつせんをするためカード等を利用者に交付し又は付与するときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該包括信用購入あつせんをする場合における取引条件に関する次の事項に係る情報を当該利用者に提供しなければならない。
一 利用者が弁済をすべき時期及び当該時期ごとの弁済金の額の算定方法
二 経済産業省令・内閣府令で定める方法により算定した包括信用購入あつせんの手数料の料率
三 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
3 包括信用購入あつせん業者は、前二項に規定するカード等の交付時又は付与時において利用者から第一項各号又は前項各号の事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該書面を交付しなければならない。ただし、当該利用者の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
4 包括信用購入あつせん業者は、第一項又は第二項に規定する包括信用購入あつせんをする場合の取引条件について広告をするときは、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、当該広告に、それぞれ第一項各号又は第二項各号の事項を表示しなければならない。
(包括信用購入あつせん業者に対する抗弁)
第三十条の四 購入者又は役務の提供を受ける者は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。
2 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。
3 第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は、その対抗を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。
4 前三項の規定は、第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない支払総額に係るものについては、適用しない。
第三十条の五 第二条第三項第二号に規定する包括信用購入あつせんに係る弁済金の支払については、当該弁済金の支払が、その支払の時期ごとに、次の各号に規定するところにより当該各号に掲げる当該包括信用購入あつせんに係る債務に充当されたものとみなして、前条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「第三十条の二の三第一項第二号の支払分」とあるのは「第三十条の二の三第
平成十二年法律第六十一号
消費者契約法
第二章 消費者契約
第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
三 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項
四 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
五 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。
七 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。
八 前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったことその他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。
4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。
5 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第三号に掲げるものを除く。)をいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
三 前二号に掲げるもののほか、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情
6 第一項から第四項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
(媒介の委託を受けた第三者及び代理人)
第五条 前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)をし、当該委託を受けた第三者(その第三者から委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者を含む。以下「受託者等」という。)が消費者に対して同条第一項から第四項までに規定する行為をした場合について準用する。この場合において、同条第二項ただし書中「当該事業者」とあるのは、「当該事業者又は次条第一項に規定する受託者等」と読み替えるものとする。
2 消費者契約の締結に係る消費者の代理人(復代理人(二以上の段階にわたり復代理人として選任された者を含む。)を含む。以下同じ。)、事業者の代理人及び受託者等の代理人は、前条第一項から第四項まで(前項において準用する場合を含む。次条から第七条までにおいて同じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者及び受託者等とみなす。
(解釈規定)
第六条 第四条第一項から第四項までの規定は、これらの項に規定する消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
(取消権を行使した消費者の返還義務)
第六条の二 民法第百二十一条の二第一項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、第四条第一項から第四項までの規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
(取消権の行使期間等)
第七条 第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。
2 会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律により詐欺又は強迫を理由として取消しをすることができないものとされている株式若しくは出資の引受け又は基金の拠出が消費者契約としてされた場合には、当該株式若しくは出資の引受け又は基金の拠出に係る意思表示については、第四条第一項から第四項までの規定によりその取消しをすることができない。