商標法56条1項において準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵が審決を取り消すべき | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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商標法56条1項において準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵が審決を取り消すべき違法に当たらない場合

 

最高裁判所第3小法廷判決/平成13年(行ヒ)第7号

平成14年9月17日

審決取消請求事件

【判示事項】    商標法56条1項において準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵が審決を取り消すべき違法に当たらない場合

【判決要旨】    商標法56条1項において準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵がある場合であっても、当事者の申し立てない理由について審理することが当事者にとって不意打ちにならないと認められる事情のあるときは、上記瑕疵は審決を取り消すべき違法には当たらない。

【参照条文】    商標法56-1

          特許法153-2

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事207号155頁

【解説】

1 本件は、商標法に基づく審判において、商標法56条1項の準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵がある場合、すなわち、特許庁の審判官が、当事者の申し立てない理由について審理をしながら、それを当事者に通知して意見を述べる機会を与えなかった場合に、この瑕疵が審決を取り消すべき違法に当たるかどうかを判断したものである。

21 Xは、楽器の製造業者であり、「M」の文字を表示した図形と「mosrite」の文字から成る商標(「本件商標」。指定商品は楽器等である。1の商標権者である。Xは、その製造販売するエレキギターに、本件商標の下方に筆記体の「of  California」の文字を付記した表示(「使用商標」)を使用している。

 Yは、楽器店の経営者であり、米国カリフォルニア州のZ社が製造したエレキギターを輸入し、販売している。このエレキギターには、「mosrite of California」という使用商標と同様の表示が付されている。Yは、Xは本件商標を不正に、すなわち、商品の品質を誤認させ又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせる態様で使用したと主張して、商標法51条に基づき、商標登録取消しの審判を請求した。ちなみに、この「mosrite of California」という表示は、米国のSが昭和27年にカリフォルニア州に会社を設立して製造を開始したエレキギターに付していたものであり、Sの表示は昭和40年ころまでに我が国でも広く知られるようになったとされている。

2 特許庁は、Xの行為は、Sとの関係で商品の品質の誤認又は出所の混同を生じさせると判断して、本件の商標登録を取り消す旨の審決をした。本件は、Xがこの審決の取消しを求めた訴訟である。

3 原審は、Yが審判請求の理由として主張したのは、Y又はZ社との関係で誤認混同が生ずるという理由であったのに、特許庁は、Sとの関係で誤認混同を生ずると判断したものであるから、本件の審決には、当事者の主張した理由以外の理由について認定判断した瑕疵があるとして、審決を取り消す旨の判決をした。

3 本判決は、商標法に基づく審判においては、同法56条1項により特許法153条1項が準用され、当事者の主張した理由以外の理由についても審理することができるから、Sとの関係における誤認混同につき審理したこと自体は何ら違法ではない、もっとも、この場合には、同条2項により、その旨を当事者に通知して意見を述べる機会を与えなければならないから、この点において手続上の瑕疵があるといえるが、本件においては当事者の申し立てない理由について審理することが不意打ちにならないと認められるので、この瑕疵を理由として審決を取り消すのは相当でないと判示して、原判決を破棄した。