容姿を理由とするスチュワーデスに対する停年延長更新拒絶が拒絶権の濫用とされた例
東京地方裁判所判決/昭和49年(ヨ)第2282号
昭和49年8月7日
【判示事項】 容姿を理由とするスチュワーデスに対する停年延長更新拒絶が拒絶権の濫用とされた例
【掲載誌】 判例時報750号26頁
労働判例207号34頁
【解説】
1 日本人スチュワーデス全員のパリー移籍事件として新聞紙上をにぎわしたエール・フランス事件(地位保全訴訟は東京地裁48・12・22判決-地位保全認容-判タ191号東京高裁49・8・28判決-会社側の控訴棄却、なお右の本案訴訟は東京地裁係属中)の、今度はスチュワーデスプロポーション版ともいうべきもので、スチュワーデスの肥りすぎと雇傭契約更新拒否の関係が争われたものであるが、判決理由に従って争点を整理すれば、(1)会社の要求するスチュワーデスのイメージが客観性を有するか、(2)申請人が同年齢の日本人女子として肥りすぎといえるか、(3)申請人の容姿、動作がスチュワーデスの勤務に不適となったといえるか、(4)申請人の勤務成績が職務遂行上不都合であるか、という諸点に尽きる。
2 就業規則では、日本人スチュワーデスについて35歳の停年制が採られているが4○歳までの黙示更新制でもあり、一般に停年延長ないし留職は使用者側で当該労働者を業務上特に必要があると認めるような場合にかぎられ、労働者側の事情すなわち労働能力や生活情況は業務上の必要性とあわせて考慮されるにすぎないのに比し、本件の更新拒否はその法律的性質からも懲戒解雇以外の個別的解雇と同様に、正当事由を示さないかぎり権利の濫用であって無効となるものと考えられ、申請人の容姿、動作及び勤務成績がもはやスチュワーデスの勤務に適合しない程度の著しいものに至っているかどうか、が焦点とされた。
3 それぞれの職域における適格性については、教師一般の適格性の観点から、外形よりは内容、形式よりは実質を重視すべきであるとして、ノーネクタイ教師に対する解雇を権利濫用で無効であるとした麹町学園事件(東京地裁46・7・19判決-判例時報六39号)、賃貸マンションの宿直員の言語、態度が横柄で無愛想であっても今後の訓練によって矯正が不可能と思われないから、これに対する解雇をやはり権利濫用とした前川産業事件(東京地裁47・2・22判決-判タ14六号)及びボイラー、浴室を管理しているからといって女子患者の入浴中に長時間その浴室内にとどまるのは病院従業員として不適格であるとして解雇が認められた綜合花巻病院事件(東京地裁48・10・11判決-判タ1八9号)等があり、本判決が本解説1の(2)、(3)について日本人女子の標準内と指摘し、(1)について本国での採用基準適用の客観性を否定し、(3)、(4)で職務遂行上いまだ不適格とは断じがたいとしたのは、スチュワーデスの特殊性を考慮に入れ、なお妥当なものといえる。