会社の社長業務代行者が発案し,会社の福利厚生費により開催した中国人研修生と従業員との親睦を図ることを目的とした歓送迎会に参加を要請されたため,労働者が業務を中断して,会社の自動車で会場に行き,途中から参加したが,飲酒はせず,終了後,帰社して,中断していた業務を続行することとし,その途中に居住する研修生らを送るため,同自動車に乗車させて運転中,交通事故に遇って死亡した事実経過からすれば,当該労働者は,同事故の際,会社の支配下にあったというべきであり,業務上の災害に当たる。
最高裁判所第2小法廷判決/平成26年(行ヒ)第494号
平成28年7月8日
遺族補償給付等不支給処分取消請求事件
テイクロ九州事件
【判示事項】 会社の社長業務代行者が発案し,会社の福利厚生費により開催した中国人研修生と従業員との親睦を図ることを目的とした歓送迎会に参加を要請されたため,労働者が業務を中断して,会社の自動車で会場に行き,途中から参加したが,飲酒はせず,終了後,帰社して,中断していた業務を続行することとし,その途中に居住する研修生らを送るため,同自動車に乗車させて運転中,交通事故に遇って死亡した事実経過からすれば,当該労働者は,同事故の際,会社の支配下にあったというべきであり,業務上の災害に当たる。
【判決要旨】 労働者が,業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後,当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に,研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことは,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項の業務上の事由による災害に当たる。
(1) 上記労働者が業務を一時中断して上記歓送迎会に途中から参加した後に事業場に戻ることになったのは,上司から歓送迎会への参加を打診された際に,業務に係る資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に断ったにもかかわらず,歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示されるなどしたためであった。
(2) 上記歓送迎会は,事業主が事業との関連で親会社の中国における子会社から研修生を定期的に受け入れるに当たり,上司の発案により,研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであって,従業員及び研修生の全員が参加し,その費用が事業主の経費から支払われるなどしていた。
(3) 上記労働者は,事業主の所有する自動車を運転して研修生をその住居まで送っていたところ,研修生を送ることは,歓送迎会の開催に当たり,上司により行われることが予定されていたものであり,その経路は,事業場に戻る経路から大きく逸脱するものではなかった。
【参照条文】 労働者災害補償保険法1
労働者災害補償保険法12の8-2
労働基準法79
労働基準法80
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事253号47頁
裁判所時報1655号188頁
判例タイムズ1432号58頁
判例時報2321号127頁
労働判例1145号6頁