金融商品取引法(以下「法」という。)159条1項1号にいう「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(以下「仮装売買」という。)の意義
東京高等裁判所判決/平成26年(う)第1367号
平成27年5月28日
金融商品取引法違反被告事件
【判示事項】 1 金融商品取引法(以下「法」という。)159条1項1号にいう「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(以下「仮装売買」という。)の意義
2 同法159条1項における取引が繁盛に行われていると誤解させる等取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的(以下「繁盛等誤解目的」という。)及び同条2項における取引を誘引する目的(以下「誘引目的」という。)の存否と,他の併存する目的の有無による犯罪の成否
3 相場操縦行為が行われた場合の必要的没収・追徴の範囲
【判決要旨】 1 法159条1項1号の仮装売買とは,実質的な権利帰属主体間での権利の移転がなされないような,単一の者が同一の有価証券等について同時期に同価格で買い付け及び売り付けをして,他の投資者には正常な取引と区別することができない記録上の取引を作り出すことをいう。
2 法159条1項の繁盛等誤解目的とは,取引が頻繁かつ広範に行われているとの外観を呈する等,取引の出来高,売買の回数,価格等の変動及び参加者等の状況に関し,投資者に,自然の需給関係によってそのような取引の状況になっているものと誤解されるものであることを認識していることであり,同条2項に定める誘引目的とは,人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず,投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的のことであって,これらの目的が認められる場合には,他に併存する目的の有無や併存する目的との間の主従関係は,犯罪の成否に影響を及ぼさない。
3 対象期間中に相場操縦行為による株式の売り付け又は買い付けのいずれか一方が行われていれば,それらの株式の売却代金(仮装売買によるものを除く。)の全てが必要的没収・追徴の対象となり,売却代金のうち,借入金,手数料,金利相当額が差し引かれて口座に入金されたとしても,これらの金額も除外されない。
【参照条文】 金融商品取引法159
金融商品取引法198の2
【掲載誌】 高等裁判所刑事裁判速報集平成27年110頁