会社法305条1項にいう「議案の要領」とは,株主総会の議題に関し,当該株主が提案する解決案の基本 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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会社法305条1項にいう「議案の要領」とは,株主総会の議題に関し,当該株主が提案する解決案の基本的内容について,会社及び一般株主が理解できる程度の記載をいうとされた事例

 

東京地方裁判所判決/平成19年(レ)第21号

平成19年6月13日

損害賠償請求控訴事件

【判示事項】    会社法305条1項にいう「議案の要領」とは,株主総会の議題に関し,当該株主が提案する解決案の基本的内容について,会社及び一般株主が理解できる程度の記載をいうとされた事例

【参照条文】    会社法298

          会社法299

          会社法301-1

          会社法303

          会社法305

          会社法施行規則93

          商法(平17法87号改正前)232の2-1

          商法(平17法87号改正前)232の2-2

【掲載誌】     判例タイムズ1262号315頁

【解説】

第1 事案の概要

 1 X(原告・控訴人)は,Y(被告・被控訴人)の株主であり,4600個の議決権を有する。Yは,発行済株式総数が120万株,株主が890名の取締役会設置会社である。なお,Yは,公開会社でない株式会社であり,書面による議決権行使の制度を採用していない。

 Xは,Yに対し,第59期定時株主総会(本件株主総会)について,平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「改正前商法」という。)232条ノ2第1項に基づき株主提案権を行使し,同条ノ2第2項に基づき,3個の議案及び議案の提案の理由を株主総会招集通知に記載することを請求した。

 Yは,株主に招集通知を送付して本件株主総会の招集を通知したが,本件招集通知には,Xが提案した議案が請求どおりには記載されていなかった(なお,Xの上記請求時には改正前商法が適用されていたが,本件招集通知の時点では,会社法が施行されている)。

 本件株主総会において,Xが提案した3個の議案のうち2個が否決され,1個は付議されなかった。

 2 本件は,Xが,議題提案権及び株主総会招集通知への議案の要領の記載請求権を行使したが,Yが,Xが請求したとおりの記載をしなかったこと等によつて株主提案権を侵害し,Xが信用低下等の損害を被ったと主張して,Yに対し,不法行為に基づき,10万円の損害賠償を求める事案である。

 3 本件の主たる争点は,(1)本件招集通知の記載の違法性(会社法305条1項所定の「議案の要領」が記載されたといえるかどうか),(2)本件株主総会において,Xが提案した議題が付議されなかったことの違法性である。

 上記(1)について,Xは,招集通知の記載内容については,株主が1000人未満であるYにおいても,会社法施行規則93条に準じて解釈されるベきであり,会社法305条1項所定の「議案の要領」には,議案の提案の理由を含み,これを中核として,株主による議案の提案内容が,一般株主に正確に理解されるような記載をすべきであると主張した。これに対し,Yは,株主が1000人未満の株式会社であって,会社法施行規則93条は適用されないから,Yは招集通知に株主による議案の提案の理由を記載する義務はないし,会社法305条1項にいう「議案の要領」とは,議題に対する具体的解決案である議案の要旨を指し,議案の提案の理由までは含まない概念であり,その基本的な内容を一般株主が理解できる程度の記載があれば足り,株主から提案された議案を明確・簡潔にするため,実質的な同一性を変更しない範囲内で訂正することもできると主張した。

第2 本判決

 本判決は,争点(1)(本件招集通知の記載の違法性)について,会社法303条,305条の趣旨は,株主に対して,議題提案権に加えて株主総会招集通知への議案の要領の記載請求権を認めることによって,提案株主の提案に係る当該議題に関する解決案を会社及び一般株主に予知させ,当該議題に関する事前準備を可能にし,当該議題に関する株主総会における会社の意見開示及び一般株主の実のある議決権行使の機会を確保することにより,提案株主の意見を会社経営に反映させる機会を拡張することができるとした上,株主総会招集通知に記載すべき議案の要領については,上記提案株主,会社及び一般株主それぞれの利益を確保すべきであるとの観点から解釈するのが相当であるとした。その上で,会社法305条1項にいう「議案の要領」とは,株主総会の議題に関し,当該株主が提案する解決案の基本的内容について,会社及び一般株主が理解できる程度の記載をいうものと判断した。その程度の記載があれば,会社及び一般株主にとって,当該議題に関する提案株主の解決案が示されることによって,当該議題について事前準備が充分可能であり,提案株主の意見を会社経営に反映させる機会を確保することができ,これにより前記法の趣旨の達成が期待できるからである。なお,Xの主張については,Yのように株主総会参考書類の交付を義務付けられていない株式会社においては,本来提案株主による議案の提案の理由を株主総会招集通知に記載する必要はないが,議案の提案の理由を任意に株主総会招集通知に記載することは許容されるものであり,その際に,提案株主が記載を要求した議案の提案の理由を省略し又は要約して記載することは,特定の提案株主による議案の提案の理由についてのみ,当該議案を排除する等の不当な目的をもって記載する等の特段の事情のない限り,違法とはいえないと判断した。

 そして,本件招集通知における3個の「議案の要領」の記載について,それぞれ検討し,いずれもXが提案する解決案の基本的内容が,Y及び一般株主が理解できる程度に記載されているものといえ,本件招集通知の記載が違法であるとはいえないと判断した。

 さらに,争点(2)(本件株主総会において,控訴人が提案した議題が付議されなかったことの違法性)については,本件株主総会において取締役の解任を求めた取締役が既に辞任しており,これを付議する前提を欠くことになるから,上記議案を付議しなかったことが株主提案の不当拒絶に当たるということはできないとして,Xの請求を棄却すべきものとした。