己の株式を会社側に高額で買い取らせる目的でその手段として議決権を行使することが、議決権の濫用にあたり許されないとされた事例
東京地方裁判所決定/昭和63年(ヨ)第2030号
昭和63年6月28日
株主権行使禁止仮処分申請事件
【判示事項】 自己の株式を会社側に高額で買い取らせる目的でその手段として議決権を行使することが、議決権の濫用にあたり許されないとされた事例
【判決要旨】 仕手集団が取得した株式で会社に買取りを要求しているものについて、右集団が買取目的を達する手段として議決権を行使することは権利の濫用に当たる。
【参照条文】 商法241-1
民法1-3
民事訴訟法760
【掲載誌】 判例タイムズ668号272頁
【解説】
Xは資本金約169億円、発行済株式数約4000万株の東証一部上場企業である。
Y1(旧社名コーリン産業株式会社)は仕手集団として著名な会社であり、Y2、Y3はその子会社等、Y4ないしY11は、Y1から株式買占めに対する協力を依頼されてこれに応じ、Xの株式を取得したものである。
Y1は昭和62年春ころからXの株式を買い集め、同年夏ころにはXの発行済株式総数の40パーセント前後を取得して、Xに対し株式の買取りを要求したが、Xがこれに応じようとしなかったため、昭和63年2月ころからは、Xに対し、経営への参加を要求するようになった。
Xの定時株主総会は同年6月29日に開催されることとなったが、その基準日においてY2ないしY11の有する株式は約1840万株であり(Y1はその保有株式のほとんどを既にY2ないしY9に処分済であって、端株を有しているにすぎなかった)、Xの発行済株式総数の約46パーセントを支配する状況にあった。
Xは、(1)Y1が議決権を有する株主でなく、Y2ないしY11もY1のダミーであって、真実の株主でないこと、(2)Y2らの議決権行使は権利の濫用にあたること等を主張して、その議決権行使禁止等を求める仮処分を申請したが、その後、申請の一部取下げ及び申請の趣旨の訂正によって、結局、Y2、Y3(その保有株式数は計1039万株)に対し、Xの株主総会においてその保有株式につき議決権を行使することの禁止を求めたところ、裁判所は、株主総会の前日である6月28日に右申請を認容する旨の仮処分決定を発した。
株主総会における株主の議決権は、株主が会社の経営に参加する最も重要な手段であり、特別の事情のない限り、これを否定することができないことはいうまでもない。
株式会社の経営は、解散、合併等、その会社が消滅するに至る場合も含め、原則として、株主の自由な意思に委ねられている。
もっとも、株主の議決権は、株主総会における決議を通じて会社の経営に参加するごとを目的とするものであるから、そのような目的によらず、会社の経営者を困惑させ、これによって不当な利益を得ることのみを目的とする等、会社の経営への参加以外の社会通念上是認し得ない目的のみをもってする議決権行使は権利の濫用にあたるとされる場合もあると考えられる。