商標登録出願について手続の補正ができない時期に至ってされたいわゆる指定商品の一部放棄の効力の有無
最高裁判所第3小法廷判決/昭和56年(行ツ)第99号
昭和59年10月23日
審決取消請求事件
【判示事項】 商標登録出願について手続の補正ができない時期に至ってされたいわゆる指定商品の一部放棄の効力の有無
【判決要旨】 2以上の商品を指定商品とする商標登録の出願者が、手続の補正をすることができない時期に至って、出願時に遡って一部の商品を除外し残余の商品を指定商品とする商標登録出願にするためにいわゆる指定商品の一部放棄をしても、その効力を生じない。
【参照条文】 商標法4-1
商標法8
商標法(昭和45年法律第91号による改正前のもの)77-2
特許法(同改正前のもの)17-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集38巻10号1145頁
【解説】
1 Xは、標章を欧文字の「ザ」「ユニオン」、指定商品を「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」とする商標登録出願をし、審査手続において、指定商品を「教育用印刷物及び学習用印刷物を除く印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」とする手続の補正(指定商品を減縮する手続の補正)をした。
しかし、Xは、右出願を拒絶されたので、拒絶査定不服の審判を請求した。
審決は、Xの出願は商標法4条1項11号に該当するとして、右審判請求を排斥した。
その理由は、本件出願の標章は先願先登録の商標の標章である欧文字の「ザ」「ユニオン」「リーダース」に類似し、かつ、本件出願の指定商品は右先願先登録の商標の指定商品である「英語読本」に類似するというものである。
2 そこで、Xは、東京高裁に右審決の取消訴訟を提起するとともに、特許庁に「指定商品の一部放棄書」という書面を提出した。
右書面は、本件出願の指定商品のうち「通信信用販売用カタログ雑誌」以外の商品は放棄するというものである。
そして、Xは、右指定商品の一部放棄により、Xの本件出願は出願の時点に遡って指定商品を「通信信用販売用カタログ雑誌」とする出願になつたから、この指定商品が「英語読本」に類似すると判断したことになる審決には事実誤認の違法がある、と主張した。
原判決は、商標法8条3項は出願の放棄について定めているが、指定商品の一部放棄は右出願の放棄にはあたらない、指定商品の一部放棄に遡及効があるとするためにはその旨の規定があることを要するが、その旨の規定はない、したがって指定商品の一部放棄には遡及効がないから、これによって審決が違法となることはない、と判断して、Xの請求を棄却した。
3 Xは、上告して、本件指定商品の一部放棄には商標法8条3項の適用がある、と主張した。
本判決は、判決要旨のとおり判示して、Xの上告を棄却した。
四 いわゆる指定商品の一部放棄の効力については、東京高裁の判決に見解の対立があった。
すなわち、原判決は指定商品の一部放棄にはX主張のような遡及効はないとするものであるが、指定商品の一部放棄にはX主張のような遡及効があるとする判決があった(昭54・12・24判決―審決取消訴訟判決集〔昭和54年〕2224頁、昭57・6・17判決―判時1067号122頁)。
学説も、指定商品の一部放棄に遡及効を認めることには問題があるとする見解(横川盛助・特許管理31巻5号513頁―前掲東京高判昭54・12・24の評釈)、指定商品の一部放棄にはX主張のような遡及効があるとする見解(播磨良承・判評294号55頁―前掲東京高判昭57・6・17の評釈、網野誠・特許管理33巻8号1043頁―原判決の評釈)に分かれていた。
本判決は、判文のとおりの理由をもって、指定商品の一部放棄の効力を否定したものである。
本判決は、右のように見解の対立のある問題について最高裁として初めての判断を示したものであるが、実務における判断の統1を図つたものといえる。