学部の廃止に伴う本件解雇は,原告Xらに帰責性のない被告Y法人の経営上の都合によるものであって,本件解雇が解雇権を濫用したものとして無効となるか否かは,人員削減の必要性,解雇回避努力,被解雇者選定の合理性および解雇手続きの相当性に加えて,本件においては,Xらの再就職の便宜を図るための措置等を含む諸般の事情をも総合考慮して,本件解雇が客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められるか否か(労働契約法16条)を判断するのが相当であるとされた例
東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第10969号
令和元年5月23日
地位確認等請求事件
【判示事項】 1 労働契約上の地位確認と同時に将来の賃金を請求する場合,労働契約上の地位を確認する判決の確定後も使用者が賃金を支払わないと予想されるなどの特段の事情がない限り,判決確定の日の翌日以降に支払期日の到来する賃金についてあらかじめその請求をする必要があるとは解されないとされた例
3 Xらの所属学部および職種が同学部の大学教員に限定されていたか否かにかかわらず,同学部の廃止およびこれに伴う本件解雇についてXらに帰責性がないことに変わりはなく,Y法人の主張するXらの所属学部および職種の限定の有無は,本件解雇の効力を判断する一要素に過ぎないとされた例
4 Y法人が国際コミュニケーション学部の廃止を決定したこと自体を不合理ということはできないものの,Y法人の財務状況が相当に良好であったことや,同学部の廃止と同時期に人文学部の新設が決定されXらの担当可能な授業科目が多数新設されたことによれば,国際コミュニケーション学部の廃止に伴う人員削減の必要性が高度であったとはいえないというべきであり,それにもかかわらず,Y法人は,人文学部への応募の機会を与えず,個別に相談したいなどと述べて,本件各労働契約の存続に期待を持たせる言動に出て,結果的に解雇回避の機会を喪失させたばかりか,Xらを学部に所属させずに他学部の授業科目を担当させるなどの解雇回避努力を尽くすこともなく,Xらに対する説明やXらとの協議を真摯に行うこともしなかったことなどの諸事情を総合考慮すれば,本件解雇は,解雇権を濫用したものであり,社会的相当性を欠くものとして無効であるとされた例
【掲載誌】 労働判例1202号21頁