盗犯等の防止及び処分に関する法律3条にいう3回以上の懲役刑と刑法56条の要件の要否
最高裁判所第3小法廷決定/昭和43年(あ)第94号
昭和44年7月8日
常習累犯窃盗被告事件
【判示事項】 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条にいう3回以上の懲役刑と刑法56条の要件の要否
【判決要旨】 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条にいう3回以上の懲役刑は、その相互間に刑法56条所定の要件が存在することを必要としない。
【参照条文】 盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3
刑法56
刑法59
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集23巻8号1045頁
【解説】
被告人はスリの常習犯であつて、10年以内に窃盗罪の前科3犯の刑の執行を受けているため、盗犯等防止法3条のいわゆる常習累犯窃盗にあたるとして、1審の判決を受け、控訴も棄却された。
被告人側の主張は、上告趣意によつて明らかなように、常習累犯窃盗は常習犯と累犯とを組み合わせたもので、右3条にいう「3回以上の懲役刑」は刑法59条の「3犯以上」と同義であり、判例によつて相互間に刑法56条所定の要件が備わつていなければならないが、被告人の前科相互間にはその要件が備わつていないから、本件は常習累犯窃盗にあたらない、というのである。
しかし、右3条は、窃盗罪等の習癖のある者をその習癖のない者より重く処罰するため新たな犯罪類型を定めたものであつて、刑法所定の累犯にあたるかどうかを問題にしていないことは、古くは昭和14年7月14日の大審院判決(刑集18巻411頁)、最近では昭和44年6月5日の第1小法廷判決が明らかにしているところである。