本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには,大幅な賃金の減少を正当化する合理的 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには,大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要であるところ,月収ベースの賃金の約75パーセント減少につながるような短時間労働者への転換を正当化する合理的な理由があるとは認められないとされ,Y社が本件提案をしてそれに終始したことは,継続雇用制度の導入の趣旨に反し,裁量権を逸脱または濫用したものであり,違法性があるとして,不法行為の成立を否定した一審判決を変更して,Xに対する100万円の慰謝料等の支払いが命じられた例

 

福岡高等裁判所判決/平成28年(ネ)第911号

平成29年9月7日

地位確認等請求控訴事件

【判示事項】    1 被控訴人(一審被告)Y社による控訴人(一審原告)Xへの再雇用労働条件の提案(本件提案)について,XとY社の間で再雇用契約が交わされていないこと等から,労働契約法20条違反が否定された例

2 高年法の趣旨に反する事業主の行為,例えば,再雇用について,極めて不合理であって,労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し,到底受け入れがたいような労働条件を提示する行為は,継続雇用制度の導入の趣旨に反した違法性を有するものであり,事業主の負う高年齢者雇用確保措置を講じる義務の反射的効果として65歳まで安定的雇用を享受できるという法的保護に値する利益を侵害する不法行為となり得るとされた例

3 継続雇用制度(高年法9条1項2号)は,高年齢者の65歳までの「安定した」雇用を確保するための措置の一つであり,「当該定年の引上げ」(同1号)や「当該定年の定めの廃止」(同3号)に準じる程度に,当該定年の前後における労働条件の継続性・連続性が一定程度,確保されることが前提ないし原則となると解するのが相当であるとされた例

4 例外的に,定年退職前のものと継続性・連続性に欠ける(あるいはそれが乏しい)労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには,同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要であるとされた例

5 本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには,大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要であるところ,月収ベースの賃金の約75パーセント減少につながるような短時間労働者への転換を正当化する合理的な理由があるとは認められないとされ,Y社が本件提案をしてそれに終始したことは,継続雇用制度の導入の趣旨に反し,裁量権を逸脱または濫用したものであり,違法性があるとして,不法行為の成立を否定した一審判決を変更して,Xに対する100万円の慰謝料等の支払いが命じられた例

【掲載誌】     労働判例1167号49頁