確定申告に当たり,同申告を税理士に依頼し,その税理士を信頼していたからといって,税務当局に確認を | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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確定申告に当たり,同申告を税理士に依頼し,その税理士を信頼していたからといって,税務当局に確認をしなかったのは,正に主観的な事情にすぎず,客観的な事情が存在するとはいえないとした事例

 

東京高等裁判所判決/平成19年(行コ)第212号

平成19年10月10日

所得税更正処分等取消請求控訴事件

【判示事項】    確定申告に当たり,同申告を税理士に依頼し,その税理士を信頼していたからといって,税務当局に確認をしなかったのは,正に主観的な事情にすぎず,客観的な事情が存在するとはいえないとした事例

【判決要旨】    (1) 我が国の租税法上、法人の所得は法人課税の対象となり、その出資者等である個人の課税所得の範囲には含まれない(所得税法7条(課税所得の範囲)、法人税法5条(内国法人の課税所得の範囲)、9条(外国法人の課税所得の範囲)等参照)。

          (2) 納税義務は、各種の経済活動ないし経済現象から生じてくるのであるが、それらの活動ないし現象は、第一次的には私法によって規律されていることから、租税法がそれらを課税要件規定の中に取り込むにあたって、私法上におけるものと同じ概念を用いている場合には、別の意義に解すべきことが租税法規の明文又はその趣旨から明らかな場合は別として、それを私法上におけるものと同じ意義に解するのが、法的安定に資することからすると、租税法上の法人は、民法、会社法といった私法上の概念を借用し、これと同義に解するのが相当である。

          (3) 我が国の租税法上、「法人」に該当するかどうかは、私法上、法人格を有するか否かによって基本的に決定されていると解するのが相当である。

          (4) 外国の法令に準拠して設立された社団や財団の法人格の有無の判定に当たっては、基本的に当該外国の法令の内容と団体の実質に従って判断するのが相当である。

          (5)~(9) 省略

          (10) 過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば、過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として通則法65条4項(過少申告加算税)が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいい、納税者の主観的事情に基づく単なる法律解釈の誤りは、このような場合に当たらないと解するのが相当である(最高裁判所平成18年11月16日第一小法廷判決・裁判所時報1424号1頁参照)。

          (11)~(13) 省略

          (14) 所得税法上、配当所得とは、法人から受ける利益の配当、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)等に係る所得等をいう(平成18年法律第10号による改正前の同法24条1項(配当所得)。そして、会社からの分配は、会社の正式な決算手続きに基づき利益が分配されたものでなくても、実質的にみてそれが出資者である地位に基づいて受ける利益の分配と見られる限りにおいて、配当所得となるものと解される(最高裁判所昭和43年11月13日大法廷判決・民集22巻12号2449頁参照)。

          (15)~(17) 省略

【掲載誌】     訟務月報54巻10号2516頁

          税務訴訟資料257号順号10798