麻薬であることの認識を否認する事案において,被告人には,当該薬物が身体に有害な薬効を有するとの認識があり,それを所持し,あるいは施用することが社会的に許容されていると認識してもやむを得ない特段の事情もないなどとして,被告人に違法薬物の認識があったとの原判決の認定判断を是認した事例
名古屋高等裁判所金沢支部判決/平成27年(う)第9号
平成27年6月16日
麻薬及び向精神薬取締法違反被告事件
【判示事項】 麻薬であることの認識を否認する事案において,被告人には,当該薬物が身体に有害な薬効を有するとの認識があり,それを所持し,あるいは施用することが社会的に許容されていると認識してもやむを得ない特段の事情もないなどとして,被告人に違法薬物の認識があったとの原判決の認定判断を是認した事例
【判決要旨】 弁護人の控訴趣意の論旨は,要するに,被告人は,パウダーと称する薬物(以下「パウダー」という。)が合法なものと信じていたのであり,被告人には麻薬の施用及び所持の故意がないから,無罪であるのに,被告人が原判示の各事実について犯罪の故意を有していたと認められるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。
ところで,ある薬物を施用又は所持するにあたって,麻薬及び向精神薬取締法66条1項ないしは同法66条の2第1項の故意があるというためには,当該薬物が,同法2条1項に定める麻薬であることの認識は必要ではなく,麻薬を含む身体に有害で違法な薬物類であることを認識すれば足りる。そして,当該薬物が身体に有害な薬物類であるとの認識があれば,それが医師や薬剤師により処方されたなど,特段の事情がない限り,通常人において,当該薬物を施用し,あるいは,それを所持することが社会的に許容されないことであり,したがって,そのような薬物を施用し,あるいは,所持してはならないと判断することは十分可能である。したがって,被告人において,パウダーが身体に有害な薬効を有する薬物であることの認識があれば,それを所持し,あるいは施用することが社会的に許容されていると認識してもやむを得ない特段の事情がない限り,麻薬及び向精神薬取締法66条1項,同法66条の2第1項の故意に欠けるところはないというべきである。
【参照条文】 麻薬及び向精神薬取締法66の2-1
麻薬及び向精神薬取締法27-1
麻薬及び向精神薬取締法66-1
【掲載誌】 高等裁判所刑事裁判速報集平成27年216頁