本件は,被告が,従前原告ら受給権者に支給していた港湾労働者年金を平成12年5月以降年額5万円減額 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

本件は,被告が,従前原告ら受給権者に支給していた港湾労働者年金を平成12年5月以降年額5万円減額したのに対し,原告らが,年金額の1方的な減額は無効であるとして,被告に対し,従前支給されていた年金額の未払分合計22万5000円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

 

神戸地方裁判所判決/平成14年(ワ)第2514号

平成17年5月20日

未払年金等請求事件

【判示事項】    1.港湾労働者年金制度の運用主体である港湾労働安定協会は、「独立した当事者」として、港湾労働者年金制度規程に基づく義務の履行において、受給資格を有する者からの年金支給の申込みに対して承諾しなければならない地位にあり、それにより受給資格者との間に直接の年金契約関係が成立するものとされた例

2.港湾労働者年金制度規程において、支給額、支給日、支給期間および支給方法等、本件年金の具体的内容が規定され、特に、年金支給額が確定した金額として定められ、また支給期間も、満60歳の誕生日の翌月から満75歳の誕生月までの間の生存期間中と確定していることから、受給権者らが取得する年金支払請求権の内容は、裁定時における本件規程の内容に基づいて確定的に定まるとして、中央労使合意による年金額変更の効力は既存の年金受給者には及ばないとされた例

3.港湾労働安定協会は、年金額の増額につき、中央労使合意に基づき港湾労働者年金制度規程を改定し、受給権者に対して一律に増額して支給する意思を有していたと認められ、個々の受給権者に対して増額して振り込むという通知は「契約内容を変更し、年金額を増額するとの申込み」として、また、受給権者がその申込みに対して何ら異議を留めず増額された年金を受給したことは「一般通念上黙示に増額を承諾したもの」と解するのが相当であるとされた例

【掲載誌】     判例時報1914号140頁

          労働判例897号5頁