被控訴人に懲戒解雇されたが判決により解雇無効が確定して復職した控訴人らが,被控訴人に対し,控訴人 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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被控訴人に懲戒解雇されたが判決により解雇無効が確定して復職した控訴人らが,被控訴人に対し,控訴人らを解雇したこと及び控訴人らの社会保険資格等の回復措置ないし適切な説明を怠ったことが債務不履行及び不法行為になるとして損害賠償等を求めた。

 

福岡高等裁判所宮崎支部判決/平成21年(ネ)第159号

平成22年2月26日

損害賠償請求控訴事件

【判示事項】    被控訴人に懲戒解雇されたが判決により解雇無効が確定して復職した控訴人らが,被控訴人に対し,控訴人らを解雇したこと及び控訴人らの社会保険資格等の回復措置ないし適切な説明を怠ったことが債務不履行及び不法行為になるとして損害賠償等を求めた。

原審は,各懲戒解雇は債務不履行・不法行為を構成しないが,控訴人会社は,社会保険の被保険者資格等の回復方法・利害得失等の説明義務を怠る過失があったとして,裁判所の認定額の範囲で損害金等の支払を命じ,その余を棄却したため,控訴人らがそれぞれ自己の敗訴部分を不服として控訴した事案である。

控訴裁判所は,原判決は相当であるとして,各控訴をいずれも棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 1 本件各控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

       事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を次のとおり変更する。

 2 被控訴人は,控訴人Aに対し,3070万0810円及びこれに対する平成10年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 被控訴人は,控訴人Bに対し,3384万0883円及びこれに対する平成10年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

 5 仮執行宣言

第2 事案の概要

   以下,略称については,原判決のそれに従う。

 1 請求,争点及び各審級における判断の各概要

   本件(平成19年6月19日訴え提起)は,被控訴人に懲戒解雇された(本件各懲戒解雇)ものの,判決により解雇無効が確定して復職した控訴人らが,被控訴人に対し,控訴人らを解雇したこと及び控訴人らの社会保険資格等の回復措置ないし適切な説明を怠ったことが債務不履行ないし不法行為を構成すると主張して,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金及びこれに対する不法行為の日である平成10年4月10日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

   本件の主たる争点は,(1)本件各懲戒解雇が債務不履行ないし不法行為を構成するか,(2)被控訴人が控訴人らの年金資格を遡及回復させなかったことないし資格回復方法等について適切な説明を行わなかったことが債務不履行ないし不法行為を構成するか,(3)控訴人らの損害の3点である。

   原判決(平成21年9月28日言渡し)は,争点(1)につき,本件各懲戒解雇が控訴人らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するとはいえない旨の,争点(2)につき,被控訴人は,控訴人らに対し,社会保険の被保険者資格等の回復方法及びその利害得失等について具体的に説明する義務を負っていたところ,これを怠った過失があり,債務不履行ないし不法行為に基づき,これにより控訴人らの被った損害を賠償する義務を負う旨の,争点(3)につき,控訴人らは,解雇時に遡って加入していた場合に得られた年金額と復職時に再加入したことにより得られた年金額との差額分の損害を被ったものであり,その損害額は控訴人Aにつき9万7991円,控訴人Bにつき92万0194円とそれぞれ認められ,また,弁護士費用は控訴人Aにつき1万円,控訴人Bにつき9万円がそれぞれ相当である旨の各判断をして,控訴人Aの請求を,被控訴人に対し,10万7991円及びこれに対する不法行為日である平成17年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,控訴人Bの請求を,被控訴人に対し,101万0194円及びこれに対する不法行為日である平成17年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,いずれも認容し,その余はいずれも理由がないとして棄却した。

   これに対し,控訴人らがそれぞれ自己の敗訴部分に関する判断を不服として本件各控訴に及んだものであるが,本判決は,原判決と同旨の判断をしてこれらをいずれも棄却するものである。