銀行の元取締役が系列ノンバンクに対する支援として受皿会社に対して行った融資(不良債権肩代わり資金及び債権簿価譲渡資金)について,社会的相当性を逸脱したとして,善管注意義務違反が肯定された事例
東京地方裁判所判決/平成11年(ワ)第28168号
平成16年3月25日
取締役に対する損害賠償請求事件
【判示事項】 1 銀行の元取締役が母体行責任を前提に系列ノンバンクに対して行った金融支援(損益支援・資金繰り支援)について,経営判断に誤りはなく,かつ,社会的相当性の逸脱もないとして,善管注意義務違反が否定された事例
2 銀行の元取締役が系列ノンバンクに対する支援として受皿会社に対して行った融資(不良債権肩代わり資金及び債権簿価譲渡資金)について,社会的相当性を逸脱したとして,善管注意義務違反が肯定された事例
3 銀行の元取締役が母体行責任を前提に系列ノンバンクに対する支援として,受皿会社に対して行った物件引取資金の融資について,経営判断に誤りはなく,かつ,社会的相当性の逸脱もないとして,善管注意義務違反が否定された事例
【参照条文】 商法266-1
【掲載誌】 判例タイムズ1149号120頁
判例時報1851号21頁
主 文
1 被告丁川一郎は、原告訴訟引受人に対し、金8億円及びこれに対する平成11年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告乙野秋夫は、原告訴訟引受人に対し、金3億円及びこれに対する平成11年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告の請求全部及び原告訴訟引受人のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告及び原告訴訟引受人に生じた費用の100分の16と被告丁川1郎に生じた費用の100分の47を被告丁川1郎の負担とし、原告及び原告訴訟引受人に生じた費用の100分の6と被告乙野秋夫に生じた費用の100分の7を被告乙野秋夫の負担とし、原告及び原告訴訟引受人に生じたその余の費用と被告らに生じたその余の費用を原告及び原告訴訟引受人の負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。
【解説】
1 本件事案の概要
本件は,平成10年10月23日に経営破綻し,特別公的管理を受けた長期信用銀行である株式会社日本長期信用銀行(現商号株式会社新生銀行)が,歴代頭取を含む主要役員9名に対して,グループノンバンクに対する支援により損害を被ったと主張して,取締役の善管注意義務違反ないし忠実義務違反による損害賠償請求訴訟を提起し,その後,株式会社整理回収機構に訴訟引受けがなされた事案である。