採用時の就業規則・出向規程による出向への包括的同意は復職を前提とするものであり、右包括的同意は定年退職時まで復職を認めない本件出向までも含むものとはいい難いとされた例
大阪地方裁判所決定/平成6年(ヨ)第1545号
平成6年8月10日
出向命令差止仮処分申立事件
JR西日本事件
【判示事項】 1 採用時の就業規則・出向規程による出向への包括的同意は復職を前提とするものであり、右包括的同意は定年退職時まで復職を認めない本件出向までも含むものとはいい難いとされた例
2 労働協約が従前の労働条件を切り下げる内容のものであっても、組合員の意見を公正に代表して締結したと認められる限り、既得権の放棄など特定の労働者に著しい不利益を強いるものでなければ、規範的効力を有するとされた例
3 労使間の協議が不十分で、出向に関して問題が生じた場合は協議して問題の解決に努める旨の覚書の趣旨が十分に尊重されたとはいえないにしても、協定の効力を否定せざるを得ないような著しい義務違反があったとはいい難いとされた例
4 本件出向命令には、それ相応の業務上の必要性があるものの、債権者のうち2名については持病の状況から出向先での作業による肉体的負担が大きく、両名を退職に追い込む余地があることから人事権の濫用として無効であるが、他の1名については精神的・肉体的にも退職に追い込まれるおそれがなく、出向対象者の人選・出向先の選択が差別的に行われたわけではないため有効であるとされた例
5 労働条件の変更により回復が困難な不利益を受けることになるとして、出向命令が無効とされた右債権者2名につき、出向命令差止の仮処分が認められた例
【掲載誌】 労働判例658号56頁
労働経済判例速報1542号11頁