信用金庫の従業員がその管理している顧客に関する信用情報等の記載されている文書を業務外の目的(内部告発)で使用するために許可を得ないで取得した行為につき、信用金庫がした懲戒解雇が無効とされた事例
福岡高等裁判所宮崎支部判決/平成12年(ネ)第192号
平成14年7月2日
解雇無効確認等請求控訴事件
【判示事項】 信用金庫の従業員がその管理している顧客に関する信用情報等の記載されている文書を業務外の目的で使用するために許可を得ないで取得した行為につき、直ちに窃盗罪として処罰される程度に悪質なものとは解されないので、就業規則所定の懲戒解雇事由である職場内外における刑事犯又はこれに類する行為に該当しないか、仮に該当するとしても、当該従業員を懲戒解雇するだけの相当性を欠き、権利の濫用に当たるなどとして、信用金庫がした懲戒解雇が無効とされた事例
【参照条文】 民法1-3
民法627
【掲載誌】 判例タイムズ1121号162頁
判例時報1804号131頁
労働判例833号48頁
【解説】
(1)事件の概要 本件は,Y信用金庫(一審被告,2審被控訴人)の支店貸付係担当係長として勤務していた一審原告X1および本店営業部得意先係として勤務していた同X2が,被控訴人の管理している顧客の信用情報等が記載された文書を不法に入手し,これら文書や被告の人事等を批判する文書を外部の者に交付して機密を漏洩し,かつ,被告の信用を失墜させたとして懲戒解雇されたことから,解雇の無効確認と賃金の支払いを求めた事案である。なお,X1およびX2の両人は,いずれも組合の副執行委員長の地位にあり,被告における不正疑惑を積極的に追及しており,収集した資料を衆議院議員秘書および宮崎県警に提出しているという経緯があった。
Xらは,(1)Yの各業務においては,Yの管理にかかるすべての情報が何らかの形で関わりをもっており,Yの職員全体が担当業務外の情報についてもアクセスすることを許されていた,(2)労働者が,企業の中で行われている不正行為を指摘し,企業に対して改善を求めることは,労働者の使用者に対する忠実義務に則った正当な行為であり,原告らは,組合活動として不正融資等の諸問題について調査し,Y理事らに改善を求めていたものであるから,資料収集行為は正当な行為であって,懲戒解雇事由としての違法性はない,などと主張していた。