鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条後段の罪の性質 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条後段の罪の性質

 

東京高等裁判所判決/昭和49年(う)第188号

昭和49年5月21日

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律違反被告事件

【判示事項】    鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条後段の罪の性質

【判決要旨】    鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条後段の規定は、銃丸の達すべき虞れのある人畜、建物、汽車、電車若しくは艦船に向ってする銃猟行為一切を、その行為の当該具体的状況のもとにおける具体的危険の有無を問わず、禁止するものである。

【参照条文】    鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16

【掲載誌】     高等裁判所刑事判例集27巻2号119頁

          高等裁判所刑事裁判速報集2021号

          東京高等裁判所判決時報刑事25巻5号37頁

          判例タイムズ316号254頁

【解説】

 いわゆる鳥獣保護法16条は、その前段において、「日出前若ハ日没後、市街其ノ他人家稠密ノ場所若ハ衆人群集ノ場所ニ於」いてする狩猟行為を禁止し、その後段においては、「銃丸ノ達スヘキ虞アル人畜、建物、汽車、電車若ハ艦船ニ向テ」する狩猟行為を禁止し、右の各違反は、いずれも1年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられる(同法21条1項1号)。

 本件において、被告人は、いわゆる勢子の役をする者が、その前方88メートルの地点にいたのに、仰角80度の角度で散弾銃を発射したとして、同条後段違反の罪に問われた。

これに対し、弁護人は、同条後段の規定は、人畜に対し具体的危険のある狩猟行為を禁止したものと解すべきであり、被告人は、本件の具体的状況の下においては全く危険はないと考えて行動したのであるから故意がない、などの主張をした。

しかし、本判決は、判決要旨摘示のように、本罪は、具体的危険犯ではなく、抽象的危険犯と解すべきであるとして、右弁護人の主張を排斥した。