被告Y寺が運営する宿泊,飲食施設で料理長を務めていた原告Xが,抑うつ神経症を発症して勤務不能となったことにつき,長時間労働や連続勤務(週40時間を超える時間外労働が最も多い月で約240時間,1年間の勤務日数が356日,そのうち349日間が連続勤務など)といった業務実態が,強い心理的負荷を生じさせる過重性を有していたと認められた例
京都地方裁判所判決/平成25年(ワ)第3844号
平成28年4月12日
時間外手当等請求事件
【判示事項】 1 被告Y寺が運営する宿泊,飲食施設で料理長を務めていた原告Xが,抑うつ神経症を発症して勤務不能となったことにつき,長時間労働や連続勤務(週40時間を超える時間外労働が最も多い月で約240時間,1年間の勤務日数が356日,そのうち349日間が連続勤務など)といった業務実態が,強い心理的負荷を生じさせる過重性を有していたと認められた例
2 Xは料理長ではあったものの,Y寺の意思決定にかかる会議に出席することはなく,Y寺の一部門が管掌する施設内で調理業務を担当していたにすぎず,部下も5人程度と少数で,経営上重要な事項の決定等に関与する立場にあったとはいいがたいこと,また,出退勤時刻は自らの判断に委ねられていたものの,タイムカード打刻が要請されていたこと,会館で提供される料理にかかる調理を行うという「包括的な指揮命令」の下で必要な労働時間が自ずと決まり,限られた範囲内で調整できたにすぎなかったことなどから,管理監督者性が否定された例
3 Xの月額賃金のうち特別手当(月19万円)につき,固定残業代の趣旨で支払われていたとするY寺の主張が,証拠がないとして退けられた例
4 特別手当,役付手当,皆勤手当のいずれも,基礎賃金からの除外が否定されたうえで,就労不能になるまでの1年3か月間のXの時間外手当(法内残業,法外残業,休日労働,深夜労働)の未払額として,合計1026万4171円が認められた例
5 Y寺の労働時間規制を軽視する態度が顕著であり,労基法違反の態様が悪質であるとして,同法37条違反にかかる未払いの時間外手当額677万7750円の全額につき,Y寺の付加金の支払義務が肯定された例
6 Xの就労不能はY寺の責めに帰すべき事由によるものであり,就労不能後の賃金請求権および期末手当請求権が発生するとして(民法536条2項),症状固定までの間について,月額40万6000円の賃金請求権のうち休業補償給付の損益相殺の対象とならない40%に当たる各月16万2400円,ならびに,就業規則の定めに基づき,就労中の期末手当の一部未払分と就労不能後から症状固定までの期末手当の支払請求が認容された例
7 Xの損害額(通院慰謝料,逸失利益,後遺障害慰謝料,弁護士費用)として合計2011万8656円が認められ,Y寺が主張した過失相殺または素因減額は否定された例
【参照条文】 労働基準法37
労働基準法41
労働基準法114
民法709
【掲載誌】 判例時報2300号129頁