原告が被告からマンションを購入した際、近隣に公衆浴場があり、その煙突の存在と排煙の流入について説 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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原告が被告からマンションを購入した際、近隣に公衆浴場があり、その煙突の存在と排煙の流入について説明しなかったことは債務不履行に当たらないとされた事例

 

大阪地方裁判所判決/平成10年(ワ)第4964号

平成11年2月9日

損害賠償請求事件

【判示事項】    原告が被告からマンションを購入した際、近隣に公衆浴場があり、その煙突の存在と排煙の流入について説明しなかったことは債務不履行に当たらないとされた事例

【参照条文】    民法415

          宅地建物取引業法31

          宅地建物取引業法35

【掲載誌】     判例タイムズ1002号198頁

【解説】

 一 事案の概要 本件は原告が被告との間でマンション(以下「本件マンション」という。)の1室(以下「本件建物」という。)について、売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したところ、本件マンションの近隣に公衆浴場(沢の湯)があり、その煙突(以下「本件煙突」という。)の存在及び排煙の流入について、被告が本件売買契約締結の際に説明をしなかったことが債務不履行に該当するとして、本件売員契約を解除したうえで支払った手付金の倍額の損害賠償を求めている事案である。

 二 本件の争点及びそれに対する判断 本件の争点は、本件売買契約において、本件煙突の存在及び排煙の流入について被告は原告に対し、説明をすべき義務を負っているか否かという点であり、これについて本判決はまず、本件売買契約において、本件建物が居住用であることから、居住者の生命、身体の安全及び衛生に関する事実は説明義務の対象となると解されるが、それらの事実は多種多様であり、その影響の程度も千差万別であり、したがって、右事実のうちから一定範囲の事実に限定して説明義務を課すべきあり、その基準については、通常一般人がその事実の存在を認識したなら居住用の建物としての購入を断念すると社会通念上解される事実とするのが合理的であるとしたうえで、本件煙突から本件建物への排煙の流入の事実とそれが居住者に対していかなる影響を及ぼしているかについて検討した結果、本件煙突から排出される煙が本件マンションへ流入していることは認められるが、排出される煙のうちどの程度が流入しているかは不明であり、また、本件煙突から排出される煙にいかなる成分が含まれ、その量がどの程度であり、このことにより本件建物の居住者に対して、健康上どのような影響を及ぼしているかも不明であり、他方、本件煙突が本件マンションの南西側角から20メートル離れていること、常時多量の煙を排出しているわけではないこと、公衆浴場はいわゆる嫌悪施設ではなく、むしろ、利便を提供する施設という側面は否定できないことを併せ考えてみると、通常一般人が本件煙突が存在し、その排煙の流入の可能性についての情報を得ていないとしても、社会通念上その事実を知ったなら本件建物の購入を断念するほどの重要な事実とまでは評価できないと認めるのが相当であるとした。