東京高等裁判所判決/平成18年(う)第558号
平成18年8月1日
【判示事項】 清掃センターのごみピットの投入口における墜落防止措置を講じなかったという労働安全衛生法違反事件につき,原判決には訴訟手続の法令違反があり,さらに審理を尽くす要があるとして,原判決を破棄し,差し戻した事例
【判決要旨】 原審は,労働安全衛生規則533条で定められた措置(転落により火傷,窒息等の危険を及ぼすおそれのあるピット等への転落防止措置)を講じなかったことを内容とする労働安全衛生法21条2項違反(労働者の墜落による危険防止措置義務違反)で提起された公訴事実において,本件ごみピットが「転落により,火傷,窒息のおそれがある」旨同規則533条所定の要件を具備していることを明示していなかったにもかかわらず,この点を検察官に釈明し,訴因の補正等を促す措置をとることもなく判決に至っており,その手続には,求釈明義務違反,刑訴法355条1項(罪となるべき事実の摘示義務)違反がある上,本件については,本件ごみピットが,同規則533条所定のピット等に該当するか否か,これに該当しない場合,同規則519条所定の「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある場所」に該当し,被告において,同規則519条所定の墜落防止措置を講じるべきであったかどうかについても審理を尽くす必要がある。
【参照条文】 労働安全衛生法21-2
労働安全衛生規則519
労働安全衛生規則533
刑事訴訟法256-3
刑事訴訟法335-1
刑事訴訟法400本文
刑事訴訟規則208
【掲載誌】 高等裁判所刑事裁判速報集平成18年114頁
東京高等裁判所判決時報刑事57巻1~12号31頁