塩化水素・窒素酸化物・ばいじん等の有害物質の排出により、健康上・財産上の損害を受けることを理由とするごみ焼却場建設差止仮処分申請が、認容された事例
松山地方裁判所宇和島支部判決/昭和53年(ヨ)第17号、昭和53年(ヨ)第19号
昭和54年3月22日
【判示事項】 塩化水素・窒素酸化物・ばいじん等の有害物質の排出により、健康上・財産上の損害を受けることを理由とするごみ焼却場建設差止仮処分申請が、認容された事例
【参照条文】 民事訴訟法760
【掲載誌】 訟務月報25巻9号2363頁
判例タイムズ384号72頁
判例時報919号3頁
【解説】
一 本件は、愛媛県のY宇和島市が同市宮下字別当地区にごみの焼却処理場を建設する計画を持ち、用地買収をすませたうえ、A会社と建築請負契約を締結して工事着工の準備を進めているところ、右ごみ焼却処理場建設予定地附近の住民であるXら573名が、ごみ焼却処理場から排出される塩化水素・窒素酸化物・ばいじん等の有害物質によって、健康上・財産上の損害を受ける蓋然性が高いとして、環境権、人格権、財産権(土地・建物の所有権、賃借権、占有権及び農業水利権、海面使用権)、不法行為の差止請求権に基づき、ごみ焼却処理場の建設禁止を禁止命令の公示を求める仮処分を申請したものである。
これに対し、Y側は、本件ごみ焼却処理場建設計画に至る経過を述べて、焼却場建設の必要性と本件建設予定地が地形、水量、ごみ運搬、排水、建設費用などの点からみて最適地であることを強調したうえ、有害物質の排出や悪臭、騒音、大気汚染等に対する対策に万全を期しているから、Xらに受忍限定を超える被害を与えるようなおそれは全くないと反論した。
二 本判決は、先ず、本件焼却場の規模、構造、各種公害防止関係法令による規則等について検討したうえ、塩化水素・窒素酸化物・硫黄酸化物・ばいじん等の有害物質の排出によってXらに被害を与える蓋然性があり、排煙の拡散によって環境汚染の蓋然性が高いから、かかる施設は原則として建設を許すべきものではないとした。
もっとも、ごみ焼却場は必要不可欠とまで言えるほど公共性の高い施設であり、どこかの土地に建設しなければならない性質のものであるが、Yは事前に環境アセスメントを実施していないことは勿論、住民に協力を要請するのみで公害に対する説明資料もなく、住民の健康に対する配慮を怠っていたもので、今後建設場所の選定を含め、建設計画の再検討をすべきものであるから、建設を許さなければならないとする特別の事情があるとも認められないと判断し、ごみ焼却場建設差止めを求めた仮処分を認容(但し、公示については必要性を欠くとして却下)した。