被告会社と原告か勤務する大阪開発部との間に専門型裁量労働制に関する労使協定の締結はなく,所轄の労基署長にも届け出られていないとして,被告会社と本社の労働者との間で締結された労使協定の内容は,原告には適用されないとされた例
京都地方裁判所判決平成18年5月29日
ドワンゴ事件
未払賃金等請求事件
【判示事項】 1 専門型裁量労働制にかかる労使協定の適用 単位は「事業場毎」とされ,事業場とは「工場,事務所,店舗等のように一定の場所において,相関連する組織の基で業として継続的に行われる作業の一体が行われている場」とされた例
2 東京の本社に勤務する労働者代表との間で締結された専門型裁量労働制に関する労使協定の内容を,事業場を異にする大阪開発部の労働者に適用するためには,当該労使協定を大阪開発部の労働者代表と締結し,所轄の労基署長に届け出る必要があるとされた例
3 被告会社と原告か勤務する大阪開発部との間に専門型裁量労働制に関する労使協定の締結はなく,所轄の労基署長にも届け出られていないとして,被告会社と本社の労働者との間で締結された労使協定の内容は,原告には適用されないとされた例
4 適法な休日の振替を実施するためには,就業規則に休日の振替に関する定めがあり,所定休日が到来する前に振り替えるべき日を特定して振替手続が行われ,休日振替によっても4週4日の休日が確保されている必要があるとされた例
5 本件の場合は所定休日が到来する前に休日の振替がなされたとは認められないとして,当該休日の日の労働が休日労働に該当するとされた例
6 専門型裁量労働制に関する労使協定の適用はなく,適法な休日の振替もなされていないとして,被告会社は原告に対し,時間外労働,深夜労働にかかる割増賃金として金45万余円の,休日労働にかかる割増賃金として金17万余円の支払義務があるとされた例
7 被告会社は原告に対し,付加金として,上記の合計金額(62万余円)の50%に相当する31万余円の金額を支払うよう命じられた例
【掲載誌】 労働判例920号57頁
(1)事件の概要 本件は,原告Xが被告会社Yに対し,大阪開発部に勤務するXには,YとYの東京本社に勤務する従業員との間で締結された専門型裁量労働制に関する労使協定は適用されず,また振替休日の実施につき,適法な休日振替の処理がなされていないなどと主張して,時間外労働,休日労働および深夜労働に対する割増賃金(108万6821円)と,割増賃金と同額の付加金,ならびに不法行為による損害賠償として金60万円の支払いを請求した事案である。
1)Xは,平成15年9月1日,コンピュータおよびその周辺機器や,ソフトウエア製品の企画・開発・製造・販売などを業務内容とするYに契約社員として入社し,同年12月1日,以下の契約内容により,正社員として専門型裁量労働制にかかる雇用契約を締結した(Xは,平成16年7月21日,Yを退職)。
(ア)勤務場所=大阪開発部,(イ)職務内容=コンピュータソフトのプログラミング(契約社員時と同様の職務),(ウ)勤務時間=裁量労働制で1日8時間勤務,(エ)休日=年間104日以上とし,1週間の労働時間40時間以内を守りながらXの裁量で決定する。Xは月間出勤管理簿に毎週2回以上の休日予定日を記載してYに提出しなければならない,(オ)賃金=基本給(月給制),住宅手当,通勤手当とし,毎月末日締の当月25日支払い,(カ)賞与=毎年6月と12月に,Xの過去6か月間(前年9月~当年3月,当年4月~当年9月)の勤務成績に応じて支給することがある。
2)Yの従業員就業規則には,就業時間や休日,休日の振替および割増賃金の支払いに関する定めのほかに,専門型裁量労働制に関する定めがある。