東京高等裁判所判決/平成21年(行コ)第168号
平成22年10月13日
労働者災害補償保険遺族補償給付不支給処分取消等請求控訴事件
【判示事項】 1 労働者の疾病等を業務上のものというためには業務と疾病等の発症との間に相当因果関係が存在することを要し,当該相当因果関係の存否は当該疾病が業務に内在する危険の現実化として発症したと認められるかどうかによって判断すべきであるから,相当因果関係があるというためには,①当該業務に危険が内在していると認められること(危険性の要件),②当該疾病が当該業務に内在する危険の現実化として発症したと認められること(現実化の要件)を要するとされた例
2 脳・心臓疾患の労災認定に関する行政通達(認定基準)は裁判所を拘束するものではないが,最新の医学的知見と業務起因性に関する(判例の)見解に基づき評価要因を検討し,策定されたものであり,判断基準としての合理性を有するものであるから,亡Kのくも膜下出血の業務起因性については,亡Kの血管病変の内容および性質,この点についての医学的知見,労働時間,勤務形態,作業環境,精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握・検討し,業務による明らかな過重負荷が加わることによって血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し発症に至ったかどうかによって判断すべきであるとされた例
3 雑誌の編集業務等に従事していた亡Kがくも膜下出血を発症して死亡したことにつき,在社時間は相当に長時間であったが,公私の区別が明確でない仕事振りであり,夕方にならなければ仕事の能率が上がらない仕事の仕方をする傾向にあったこと,時間外労働時間は1か月当たり45時間を上回っている月も存在するが,ほとんどの土曜日と日曜日は休みをとり,ゴールデンウイーク期間中(9日間)や発症直前(10日間)に休暇を取得していたこと,夜間勤務は継続して行われていたが,昼頃に出社して深夜まで勤務していたのは亡Kの仕事のスタイルに起因するものであったこと,亡Kが従事していた業務は過重なものではなく,亡KがR社の人事制度に重圧を感じてはいなかったこと,亡Kのくも膜下出血は多発性□胞腎が原因となって発症したと考えられることなどから,亡Kの死亡の業務起因性が否定された例
4 亡Kの死亡に業務起因性を認めた一審判決が取り消され,Y労基署長の行った労災補償給付不支給処分の取消請求が棄却された例
【参照条文】 労働者災害補償保険法7
【掲載誌】 判例時報2101号144頁
労働判例1018号42頁
労働経済判例速報2090号3頁