広島高等裁判所判決/平成19年(ネ)第317号
平成20年6月26日
損害賠償請求控訴事件
【判示事項】 柔道整復師の五十肩の患者に対する治療について,治療上の過誤,転医助言義務の懈怠があったとしてその損害賠償責任が認められた事例
【参照条文】 民法415
民法656
【掲載誌】 判例タイムズ1278号257頁
【解説】
1 Xは,平成12年1月31日から,右肩関節痛を訴え,整形医師の治療を受けていたが,治療によっても疼痛がなくならないことから,同年6月14日,Yの経営する整骨院を受診した。Yは,Xの症状を頸椎捻挫,右肩関節捻挫及び右肘関節捻挫と診断し,その後10月23日まで,Xは筋肉を緩めるためのマッサージ等の治療を受け,痛みのある場合には,Yの指示により三角布を使用し,安静を保ってきたが,10月26日,労災病院を受診したところ,右凍結肩,右肩関節周囲炎との診断を受け,入通院を余儀なくされ,五十肩の回復が遅れた。
そこで,Xは,Yに対し,治療行為の過誤,転送義務違反,問診義務違反があり,それにより症状が悪化したとし,債務不履行により損害賠償を請求した。
一審は,Xの主張するYの過失とYの治療行為とX主張の損害との因果関係を否定し,本訴請求を棄却したため,Xが,一審判決を不服として控訴した。
2 本判決は,(1)既に慢性期にあったXの五十肩に対する治療方法は運動療法を主体とすベきであるのに,安静や三角布での固定を指示したのであるから,その治療は不適切であった,(2)五十肩に対する施術は柔道整復師の権限ではないから,整形外科医での受診治療を受けるよう転医を働きかける義務があるのに,この転医助言の義務を懈怠した,(3)Xは,Yの上記のような義務違反により,適切な治療を受ける機会を奪われ,五十肩の悪化ないし回復の遅れという損害を被った,などと判断し,一審判決を変更し,Yに対して,100万円の慰謝料と10万円の弁護士費用の支払を求める限度で,Xの本訴請求を認容した。