任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例
最高裁判所第3小法廷決定/平成6年(あ)第187号
平成6年9月16日
覚せい剤取締法違反、公文書毀棄被告事件
【判示事項】 1 いわゆる強制採尿令状により採尿場所まで連行することの適否(積極)
2 任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例
【判決要旨】 1 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、いわゆる強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができる。
2 覚せい剤使用の嫌疑のある被疑者に対し、自動車のエンジンキーを取り上げるなどして運転を阻止した上、任意同行を求めて約6時間半以上にわたり職務質問の現場に留め置いた警察官の措置は、任意捜査として許容される範囲を逸脱し、違法であるが、被疑者が覚せい剤中毒をうかがわせる異常な言動を繰り返していたことなどから運転を阻止する必要性が高く、そのために警察官が行使した有形力も必要最小限度の範囲にとどまり、被疑者が自ら運転することに固執して任意同行をかたくなに拒否し続けたために説得に長時間を要したものであるほか、その後引き続き行われた強制採尿手続自体に違法がないなどの判示の事情の下においては、右一連の手続を全体としてみてもその違法の程度はいまだ重大であるとはいえず、右強制採尿手続により得られた尿についての鑑定書の証拠能力は否定されない。
【参照条文】 刑事訴訟法99
刑事訴訟法102
刑事訴訟法218
刑事訴訟法219
刑事訴訟法222
刑事訴訟法317
警察官職務執行法2-1
道路交通法67-3
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集48巻6号420頁
裁判所時報1132号2頁
判例タイムズ862号267頁