1階屋根工事に従事していた大工が地上に墜落して重傷を負った場合、建物建築請負業者の安全配慮義務による損害賠償責任が認められた事例
浦和地方裁判所判決/平成4年(ワ)第1679号
平成8年3月22日
損害賠償請求事件
【判示事項】 1階屋根工事に従事していた大工が地上に墜落して重傷を負った場合、建物建築請負業者の安全配慮義務による損害賠償責任が認められた事例
【参照条文】 民法415
労働安全衛生法21-2
労働安全衛生規則518
労働安全衛生規則519
【掲載誌】 判例タイムズ914号162頁
労働判例696号56頁
【解説】
1 Xは、平成元年12月、Yの依頼により、木造2階建住宅の建築のうち木工事を施工することになり、平成2年2月、右建築工事現場1階屋根の上において、1階屋根の垂木に破風板を打ち付ける作業に従事していた際、約3メートル下の地面に墜落し、背髄損傷の傷害を受け、両下肢麻痺、知覚脱失等の後遺障害が残った。
そこで、Xは、足場等の作業床、囲い等を設けず、防網を張るとか安全帯を使用させずに高所での作業を行わせたYに安全配慮義務違反があるなどと主張し、Yに対して、総額1億円の損害賠償を請求した。
これに対し、Yは、Xの右墜落事故は、Xの全面的な不注意に起因するものであるから、Yに安全配慮義務違反の責任はないと反論するとともに、Xは、Yの現場監督の作業中止の勧告を無視して、外回りの足場がないにもかかわらず、自己の判断で破風板に垂木を打ち付ける作業をしたのであるから、大幅な過失相殺をすべきであるなどと主張した。
2 本判決は、XとYとの関係は、典型的な雇用契約関係ではないが、実質的な使用従属関係があったというべきであるから、Yは、Xに対し使用者と同様の安全配慮義務を負っていたとしたうえ、Yは、Xに対し、足場その他の墜落を防止するための設備のないまま高所における作業に従事することを禁止することなく、Xが地上約3メートルの高所において作業に従事することを漫然と黙認したものであるから、その安全配慮義務違反は明らかであるとしてYの損害賠償責任を認めたが、外回りの足場がなくとも危険がないと軽信して高所での作業を行ったXに重大な過失があったとして8割の過失相殺をし、約3321万円の支払を求める限度で本訴請求を認容した。