遺失物法(平成18年改正前)に基づく報労金請求が権利の濫用として許されないとまではいえない | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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大阪高等裁判所判決/平成19年(ネ)第2252号

平成20年1月25日

拾得物報労金請求控訴事件

【判示事項】    1 遺失物法(平成18年法律第73号による改正前のもの。以下同じ。)に基づく報労金請求が権利の濫用として許されないとまではいえないとされた事例

2 株券の拾得者からの遺失物法に基づく報労金請求について,遺失物法4条1項所定の「物件ノ価格」を株券の価格の70パーセントとして報労金が算定された事例

【参照条文】    遺失物法(平18法73号改正前)4-1

          遺失物法施行令(平19政令21号改正前)1-1

          民法1-3

          商法(平17法87号改正前)230の6-1

          会社法228-1

【掲載誌】     判例タイムズ1273号294頁

          判例時報2003号55頁

       主   文

 1 原判決を次のとおり変更する。

 2 控訴人花子は,被控訴人に対し,91万3850円及びこれに対する平成18年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 控訴人太郎は,被控訴人に対し,9万1280円及びこれに対する平成18年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

 5 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その1を控訴人らの,その余を被控訴人の各負担とする。

       事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

 2 同取消しにかかる被控訴人の請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要及び訴訟の経過

 1 本件は,被控訴人が,控訴人らに対し,平成18年1月23日,控訴人ら所有にかかる株券を拾得し,翌24日にこれを届け出たとして,遺失物法(平成18年法律第73号による改正前のもの。以下同じ。)4条1項本文に基づき,控訴人花子に対しては,報労金261万1000円と遅延損害金の,控訴人太郎に対しては,報労金26万0800円と遅延損害金の各支払を求めた事案である。

 控訴人らは,被控訴人の報労金請求が権利の濫用にあたると主張し,また,報労金の割合や額を争う。

 2 原審は,控訴人の報労金請求が権利の濫用にあたるとは認められないとし,また,報労金算定の基礎となる拾得した株券の経済的価値は,株式の価値の80パーセント相当額であると認め,被控訴人の控訴人らに対する報労金の割合は12パーセントとするのが相当であるとして,控訴人花子に対し,125万3280円と遅延損害金の,控訴人太郎に対し,12万5184円と遅延損害金の各支払を命じた。

 3 これに対し,控訴人らが控訴を申し立てた。

(後略)

【解説】

 1 本件は,盗難被害に遭ったY1,Y2所有の各株券(以下「本件各株券」という。)を拾得して警察署長に差し出したXが,Y1,Y2に対し,遺失物法に基づき,報労金の支払を求めた事案である。

 これに対し,Y1,Y2は,Xは,Y1,Y2に対する報労金の請求にあたり,脅迫的言動を行っただけでなく,拾得したY1の所有物すべてを警察に届け出ず,Y1にとって重要な物品を破り捨てるなどの違法行為をしているなどとして,Xの報労金請求が権利の濫用に該当すると主張し,また,本件各株券は,その拾得場所や拾得状況からすると,善意取得される可能性は極めて低いことなどから,報労金の額は極めて低額となるべきであると主張して,報労金の額を争った。

 本件の争点は,(1)Xの報労金請求が権利の濫用に該当するか否か,(2)報労金の額である。

 2 原審は,(1)については,XがY1に脅迫的言動を行ったことを認めるに足りる証拠はないなどとして,Xの報労金請求が権利の濫用に該当するとの主張を排斥し,(2)については,報労金算定の基礎となる本件各株券の経済的価値は,株式の価値の80パーセント,報労金の割合は,12パーセントとするのが相当であるとした。

 3 本判決は,(1)については,Xの処置や態度については,遺失者の心情や報労金の支払能力・経済的事情等,相手方の事情に対する配慮に欠ける点があったことは否定できないとしながらも,Xの報労金請求が権利の濫用として許されないとまではいえないとし,(2)については,報労金算定の基礎となる本件各株券の価格は,返還を受ける当時の本件各株券にかかる株式の時価の70パーセント相当額,報労金の割合は,10パーセントが相当であると認めた。