昭和35年頃においては,石綿を常時取り扱う民間事業者においても,石綿粉じんが生じる作業に従事する作業員が石綿粉じんにばく露することにより,健康被害を具体的に予見することが具体的に可能となったというべきであり,これを前提として結果を回避する義務が生じたというべきであるとされた例
高松地方裁判所判決/平成22年(ワ)第390号
平成24年9月26日
損害賠償請求事件
【判示事項】 1 石綿はかつて,わが国の産業社会や日常生活において必要かつ有益なものとして使用されており,その初期には石綿粉じんによる健康被害の実態が十分解明されていなかったものであるから,石綿粉じんにばく露する環境であったというだけで安全配慮義務違反を認めるのは相当ではなく,石綿粉じんによる健康被害につき,予見可能性・予見義務違反があり,かつ,結果回避可能性・結果回避義務違反がある場合に,安全配慮義務違反があるというべきであるとされた例
2 昭和35年頃においては,石綿を常時取り扱う民間事業者においても,石綿粉じんが生じる作業に従事する作業員が石綿粉じんにばく露することにより,健康被害を具体的に予見することが具体的に可能となったというべきであり,これを前提として結果を回避する義務が生じたというべきであるとされた例
3 被告Y社高松工場の石綿管製管職場においては,石綿粉じんがほぼ恒常的に発生しており,その濃度も高濃度であり,健康被害発生の蓋然性も高いと認められ,じん肺法等関連法令の規定に照らすと,Y社は,石綿管製造工程に従事する労働者に対し,①石綿粉じん飛散抑制義務,②じん肺予防のための教育・指導義務,③石綿粉じん吸引防止義務,④早期発見・救護義務を負っていたというべきであり,本件事実関係の下では,Y社に①から④のいずれについても安全配慮義務違反があったと認められるとされた例
4 原告Xら6名のうち3名については損害が生じていないが,他の3名については損害が生じており,また,過失相殺,他職粉じん歴による減額は認めることができず,消滅時効も完成していないとして,Xら6名のうち3名に対するY社の損害賠償責任が認められた例
【参照条文】 民法415
民法709
【掲載誌】 判例時報2178号50頁
労働判例1063号36頁