会社更生法119条にいう納期限の意義 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第1小法廷判決/昭和46年(行ツ)第88号

昭和49年7月22日

債権差押処分取消請求事件

【判示事項】    会社更生法119条にいう納期限の意義

【判決要旨】    会社更生法119条所定の租税のうち徴収のために納税の告知を必要とする源泉徴収に係る所得税等に関しては、同条にいう納期限とは、各税法の規定により当該租税を納付すべき本来の期限(法定納期限)ではなく、納税の告知において指定された納付の期限(指定納期限)を指すものと解すべきである。

【参照条文】    会社更生法119

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集28巻5号1008頁

          訟務月報20巻10号171頁

          最高裁判所裁判集民事112号413頁

          裁判所時報650号2頁

          判例タイムズ313号247頁

          金融・商事判例520号44頁

【解説】

 会社更生法119条の「納期限」の意義につき、従来の徴税実務は、いわゆる指定納期限(国通法36条参照)を意味するものと解していた(荒木・例解国税徴収関係法495)。

ところが、本件原判決(行集22・6・951、評釈、山田・税理15・3・161、荒川・税務事例3・11・32、前田・ジュリ553・138)は、右徴税実務とこれを是認した一審判決(行集21・1・90、評釈、木村・ジュリ499・139、深谷・税務事例2・5・62)を否定し、法定納期限(国通法2条8号)の意味に解すべきことを説示して、実務に大きな影響を与えた。

その理由は、会社更生法の右規定は、その租税の取戻権的性質によるものではなく、単にその租税が更生手続開始前の原因に基づいて生じたものであるかどうかの区別を容易ならしめるための技術的規定であるから、客観的に明確な法定納期限を基準とすべきであるというのである。

 しかし、同条は、その租税が、国庫等に代わって会社が徴収保管するもので、取戻権的性格を有することを根拠とする規定であるというのが従来からの支配的見解であり(兼子=三ケ月・条解会社更生法(中)429、松田・会社更生法80、96)、これを前提とすれば、指定納期限説を正当とすべきである。

すなわち、同条の租税は、本来ならば、納期限の前後を問わず全額を共益債権とすべきものであるが、更生関係人間の利害調整の見地から、更生手続開始当時までに指定納期限が到来しないため強制徴収をすることができなかったものについてだけ取戻権的取扱をすることとしたのが同条の趣旨であると解することになる。

本判決は、この理を判示したものであって、学説の多数の見解と一致する(前掲評釈のほか、ジュリ335・110の大隅発言、書記官研修所・会社更生手続の実務的研究170、兼子=三ケ月・前掲434、深谷・金法725・24等参照)。