長時間の新幹線通勤や単身赴任を伴う転勤命令が違法とされ、介護ハラスメントにもあたり慰謝料40万円~120万円が認められた事例~NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件
大阪高等裁判所判決平成21年1月15日労働判例977号5頁
配転無効確認等請求控訴事件
NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件
大阪高等裁判所判決平成21年1月15日労働判例977号5頁
【判示事項】 1 一審被告Y社の構造改革に伴う雇用形態の変更(本件計画)において当該雇用形態の選択を行わず「60歳満了型」を選択したものとみなされた一審原告Aらに対して行われた遠隔地あるいは異職種への配転命令1ないし3につき,Aらの労働契約に勤務地・職種の限定は認められず,他方,本件計画には必要性があり,また本件計画は脱法的でも年齢差別でもないとして,同旨の一審判断が維持された例
2 本件配転命令1および2については業務上の必要性を認めたものの,本件配転命令3につき,長時間の新幹線通勤や単身赴任といった負担を負わせてまで配転を行わなければならないほどの業務上の必要性は認められないとして配転命令権の濫用を認め,これを否定した一審判決が変更された例
3 本件配転命令1および2における適正手続の履行につき,本件配転(大阪から名古屋へ転勤)はその性質上,少数の例外を除いてすべて実行されざるを得なかったものであり,その点で通常の業務の過程でなされる個別の配転(労働者個人の特性,キャリアパスの形成等を考慮してなされる業務分担の変更)とは性質を異にするものといえ,このような配転の理由・必要性とは構造改革に伴って本件計画が実施されることにより業務分担を変更する必要があるということにつきるのであって,このような観点からすれば,Y社は本件配転命令1および2の理由および必要性を説明したというべきであるとされた例
4 本件配転命令3を受けた一審原告17名(E~P,R~T,V,W)に共通の損害として,同人らが長距離通勤や単身赴任によって肉体的・精神的ストレスを受けたことが,その年齢とも相俟って,軽視できないものがあるとされた例
5 本件配転命令3により生じた損害に関して,個別に考慮すべき事情として,Eにつき実父の介護および実母の世話の必要性,Fにつき糖尿病の食事療法および運動療法への制約,Rにつき肺ガン手術後の妻の援助の必要性を認め(一審維持),これに加えてVにつき妻の両親の介護への差支えを認めた(一審変更)うえで,Eにつき120万円,Fにつき80万円,Rにつき120万円,Vにつき60万円,その余の13名につき各40万円の慰謝料が認容された例