生命保険募集代理店の適格性と委託契約解除の合理性 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東京高等裁判所判決平成30年6月14日

地位確認等請求控訴事件

【判示事項】 継続的契約(生命保険募集代理店委託契約)の解除に合理的な理由があるとされた事例

【判決要旨】 継続的契約(生命保険募集代理店委託契約)を解除するには合理的な理由が必要であるところ、本件では、生命保険募集人の変更登録につき虚偽の申請があったことなどを踏まえると、解除には合理的な理由がある。

【参照条文】 民法651-2

【掲載誌】  金融法務事情2112号54頁

 1 事案の骨子

  本件は、生命保険募集代理店委託契約(以下「本件代理店契約」という)を解除された保険代理店が、保険会社に対し、その解除が無効であるとして本件代理店契約上の地位を有することの確認と、解除に伴う損害賠償(民法651条2項)を請求した事案である。

  後記のとおり、原判決および本判決は、本件代理店契約の解除が有効であると判断し、Xの請求をいずれも棄却した。

  2 事案の概要

  (1) 当事者等、本件代理店契約

  B社は、生命保険会社であるA社と、平成22年に、生命保険募集代理店契約を締結していたが、平成24年にY社がA社を吸収合併したため、その契約はY社との関係で継続していた。

  B社は、生命保険募集代理店事業をX社に承継させ、X社とY社は、平成26年5月7日、本件代理店契約を締結した。

  (2) 生命保険募集人

  生命保険は、生命保険募集人として登録を受けた者等によらなければ保険募集を行うことができないものとされており(保険業法275条)、B社に登録していた複数の生命保険募集人がX社に所属を変更する旨の登録事項変更連絡書を提出していた。

  (3) 解除

  Y社は、本件代理店契約締結後間もなく、X社の生命保険募集人として登録されたPについて、X社の使用人としての実体がなく、PがX社の使用人としてX社の生命保険募集人に変更する旨のP名義の登録事項変更連絡書(以下「本件登録事項変更連絡書」という)もPの意思に基づかずに作成されたとの情報を得た。

  Y社は、所要の調査を経て、上記の事由およびその他の事由を根拠として、平成26年10月、本件代理店契約の定める1カ月の予告期間をおき、同年11月末日をもって本件代理店契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件解除」という)。

  3 原判決および本判決の要旨

  (1) 争点

  X社は、本件代理店契約を締結するにあたり、やむをえない事情がなければ解除することができない旨を黙示に合意した(争点1)、そうでなくとも本件解除は信義則に反し無効である(争点2)と主張して本件解除の効力を争ったほか、仮に本件解除が有効であったとしても、X社に不利な時期に行われたとして損害賠償を請求した(民法651条2項、争点3)。

  (2) 原判決の判断の要旨

  ア 争点1

  原判決(東京地判平29.11.22本誌本号60頁)は、X社とY社が本件代理店契約を締結するにあたり、やむをえない事情がなければ解除することができない旨を黙示に合意したとは認めるに足りないと判断した。

  イ 争点2

  原判決は、本件代理店契約を解除するためには、継続的契約であることから、信義則上、合理的な理由があると認められる場合でなければ許されないとした。

  原判決は、Pについて、X社とは雇用等の関係になく、X社の使用人としての実体を伴っておらず、B社からX社への所属を変更する旨の本件登録事項変更連絡書もPの意思に基づかずに作成されたもの(偽造)であるとの認定をした。

  原判決は、生命保険会社にとって、生命保険募集代理店に所属する生命保険募集人の構成を正確に把握することは、当該代理店において適正な募集事務を行うことができるか否かを管理、監督する上で重要であるから、使用人としての実体のないPをX社の生命保険募集人として登録する旨の本件登録事項変更連絡書を偽造したことは、生命保険募集代理店としての適格を欠くと判断した。

  したがって、本件解除は有効であると判断した。

  ウ 争点3

  原判決は、本件解除がX社に不利な時期にされたとはいえないとして損害賠償請求を棄却した。

  (3) 本判決の要旨

  本判決も、原判決と同旨の判断をして、X社による控訴を棄却した。

 本件では、保険業法上、必要となっている生命保険募集人の登録に関し、本件登録事項変更連絡書を偽造してまで虚偽の変更登録をしたと事実認定されているのであるから、そのような認定事実を前提とする限り、その違法性は大きいといわざるをえず、やむをえない事由の有無についてどのような見解に立ったとしても、解除が認められる事案であったといえよう。